林:「夢であいましょう」で、たしかもう一つ美輪さんの歌がありましたよね。「♪デュヤデュヤデュヤ~ある日あいつが……」とかいう。
美輪:ああ、「誰も」(副題「あいつのためのスキャットによる音頭」)という歌ですね。
林:あれも歌ってほしいなと思うんです。
美輪:あれは4分の5拍子なんですよ。4分の5拍子なんて「テイク・ファイブ」という曲があるだけでね。中村八大さんがつくったんです。八ちゃんに「これ、頼むね」と言われて、見たら4分の5拍子で、それを初見で録音するって言うんです。「ちょっとカンベンしてよ」「いや、あんただったらできるよ」と言うので、しょうがないからやったら、おかげさまで評判がよかったんです。それでしばらくのあいだ「夢であいましょう」で歌ってました。
林:美輪さんが歌うと、皆さんが盆踊りみたいに太鼓の周りで踊りながら歌うというすごく不思議な歌でした。一度聞くと忘れません。あの歌、「紅白」で歌ってほしいですよ。
美輪:もう忘れちゃいました。あのころはいろいろ冒険させてもらいました。いろんな方とお近づきになりましたから、まあ、幸せな人生だったのかなとは思ってますね。林さんももちろんですけど。
林:とんでもないです。私なんかザコのザコですけど、歴史に残るような人たち、三島由紀夫さんだとか谷崎潤一郎さんだとか……。
美輪:谷崎潤一郎さんは、私、存じ上げてないんです。「大阪へ来てくれ」というお話は来ましたけど、「用があるならそちらからいらっしゃい」ということで(笑)。だからお会いしてないんです。川端康成さん、野坂昭如さん、遠藤周作さん、吉行淳之介さん……。
林:“美輪明宏”というサロンに皆さんが集ったわけですね。
美輪:五木寛之さんも、銀座でお勤めしてらしたときに「銀巴里」(銀座にあったシャンソン喫茶)へよくお寄りになって、きれいな可愛い女の子の歌い手がいたので、「あの子をお目当てでいらっしゃるの?」って聞いたら、私を指して「ですよ」って(笑)。