![フル・コンタクト/ユメール~キューン~マラビー](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/4/240mw/img_34f906a799d2267051414cc363a0adb112681.jpg)
知性と力技のフランス盤
Full Contact / Humair-Kuhn-Malaby
常日頃から感じているのは、著名ドラマーが意外に長寿である事実だ。ポール・モチアン、チコ・ハミルトン、ロイ・ヘインズはいずれも保守派ではない70歳超の現役。昨年他界したマックス・ローチは、享年83歳だった。ヨーロッパ勢も負けてはいない。アレックス・リール(1940~)やアルド・ロマーノ(1941~)はつい最近相次いで新作をリリースした。今回は彼らと同世代のスイス人ドラマー、ダニエル・ユメールを紹介したい。
今年5月に70歳を迎えたユメールは、メインストリームからフリーまでの振幅の広い守備範囲によって、欧州最高の名声を獲得しているドラマーだ。本作は3人の連名によるトリオだが、実質的なリーダーシップを執ったのはユメールだと考えていい。まず3人の顔ぶれが興味をひく。ユメールとキューンは80~90年代にジャン・フランソワ・ジェニ・クラーク(b)と共に、欧州最強トリオの名誉を獲得した重量級。98年にジェニ・クラークが他界してからは別々の道を歩んでおり、本作は2人の再会作とも位置づけられる。
このベテラン2人に絡むのが、息子ほど年下のアメリカンであるマラビーというのも面白い。3者の関係は経験豊富な欧州のマスターと、最先端のNYシーンを体現するマラビーとのトリオ。
ポップ・アート系の美術家に触発された即興曲《ジム・ダイン》、ピアノ&ドラムスのデュオ場面ではあのトリオが甦る《フル・コンタクト》、ユニゾン・ペアが交代しながら密度を深める《Ghislene》と、ユメールの立場から見れば節目の年に新しいミュージシャンとの共演によって、これまでとは違うトリオ・サウンドに挑んだ気持ちがあったはず。その結果はユメールとキューンを知るファンの期待を裏切らない個人技が堪能できることに加えて、マラビー・ファンにはいつもと趣の異なる表情を味わえるのが収穫となった。知性と力技を両立させる好例を聴くことができるフレンチ・レーベルからの1枚だ。
【収録曲一覧】
1. Buried Head
2. Jim Dine
3. Full Contact
4. Oasis
5. Ghislene
6. Salinas
7. Effervescent Springbox
8. Sleeping Angels
ダニエル・ユメール:Daniel Humair(per) (allmusic.comへリンクします)
ヨアヒム・キューン:Joachim Kuhn(p)
トニー・マラビー:Tony Malaby(ts)
2008年1月録音
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