その時だ。私を診てくれたクリニックの先生(男)が、そのやりとりを聞いていたのだろう、すぐフロントの看護師さんに指示。走って行ったら間に合ったので、無事その女性は診察を受けることができた。
よかった。私はその先生の指示が嬉しかった。
フロントはみんなマニュアル化しているが、なんとか患者さんの役に立ちたいという気持ちが滲んでいたからだ。
昔はこれが当たり前だった。今は全てがマニュアル化して、「喉が痛い」と言っても医者は患者を見ることもなく、ただ画面を見つめて診察する。
こんな小さなことだけど、私はちょっと昔の赤ひげ先生的な(といっても見た目は今風なイケメン先生だが)クリニックがそばにあることに感謝した。
その後、熱は下がってきたが微熱が上下し、久しぶりに熱に浮かされる感覚を持った。
かつて私は小学校二年、三年と結核で、朝・昼・三時・夜と熱ばかり測っていた時を思い出したのだ。
※週刊朝日 2020年2月14日号