

例年のオフは大型補強の主役だった巨人だが、今オフは違った。フリーエージェント(FA)では1人も獲得できずに終わった。野手で目立った補強は、昨年、大リーグ・ナショナルズでワールドシリーズ制覇に貢献したメジャー通算88本塁打のヘラルド・パーラぐらいだ。静かなオフは生え抜きの選手たちにとってチャンスを意味する。
原辰徳監督は一塁のレギュラー候補に3年目の北村拓己、2年目の山下航汰の名前を挙げて奮起を促した。
常勝が義務付けられ、毎年レギュラー争いが激しい巨人で、若手がチャンスをつかむことは至難の業だ。
現在は日本ハムの主力として活躍している大田泰示も「松井秀喜の後継者」として入団してから5年間は55番を背負うなど大きな期待を寄せられていたが、伸び悩んだ。
その中で坂本勇人は高卒2年目でレギュラーを勝ち取った。当時、不動のレギュラーだった二岡智宏(現・3軍総合コーチ)が戦線離脱している間に遊撃に定着すると、二岡が復帰後もそのポジションを明け渡さなかった。その後の活躍は周知の通りで、球界を代表する選手に成長した。
坂本の後に続いたのが岡本和真だ。2018年に打率3割9厘、33本塁打、100打点と大ブレーク。不動の4番の座を築きつつある。岡本は村田修一(現・2軍野手総合コーチ)が17年限りで退団し、競争となった三塁でレギュラーをつかんだ。
大きな可能性を秘めた選手も、ポジションが埋まり、出場機会がないと輝きが失われてしまう。北村と山下にとって、今年は千載一遇のチャンスだ。
北村は石川・星稜高出身でOB・松井秀喜氏の後輩になる。亜大を経て17年ドラフト4位で巨人に入団。昨季はイースタン・リーグで主に4番を打ち、打率2割9分、8本塁打。最高出塁率(4割1分4厘)のタイトルを獲得した。
中日・根尾昂、ロッテ・藤原恭大と同世代の山下は、群馬・健大高崎高から18年育成ドラフト1位で入団した無名の存在だった。だが、昨季は打率3割3分2厘でイースタン・リーグの首位打者を獲得。7月5日に高卒1年目で史上初の支配下昇格を果たした。内外角の球を天才的なバッティングコントロールでさばく。
巨人2連覇の命運を握る北村、山下は「第2の坂本勇人」になれるか――。(梅宮昌宗)
※週刊朝日オンライン限定記事