野宮さんのライブと言えば、東京ではビルボードライブである。「おしゃれをしても行く場所がないという悩みもあるので、私のビルボードライブは絶好の場所」(野宮真貴)

「20世紀のピチカート・ファイヴの名曲を、21世紀のスタンダードナンバーとして唄う」というコンセプトで、四角いツバの帽子、オレンジのツーピースミニ、白い手袋、ファー付きラメのハイヒールで登場、「勝手にしやがれ」風60‌’sファッションで往年の名曲を次々に披露した。

 ♪午前10時すこし過ぎ/バスタブにひとりぼっち/まだきょうは何ひとつ/予定はないけど……きみみたいにきれいな女の子が/どうして泣いてるの♪(「きみみたいにきれいな女の子」)

 ♪とても悲しい歌が出来た/今朝 目を醒ましたときに/あんまり悲しい歌だから/きみに聴かせたくないけど……ごめんね/ぼくはきみのこと/あんなに愛してたのに♪(「悲しい歌」)

 流れゆく人生と切ない都会の恋。恋愛映画をイメージさせる数々のナンバーを織り交ぜながら、終盤、バックのカーテンがするすると開いて東京の夜景がパッと現れ、「東京は夜の七時」で会場は総立ちになった。この曲のリリースは27年前、93年12月である。野宮真貴の歌声に歓声をあげる聴衆の脳裏には、あの頃の渋谷とその界隈を歩く恋人たちの風景が浮かんだ。

週刊朝日  2020年2月7日号

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