以前から「歌舞伎界の次世代の星」として注目されてきた中村隼人さん。昨年はその期待に、スーパー歌舞伎II「新版オグリ」やNHKの時代劇ドラマ「大富豪同心」に主演するなど、満点で応えた。」
「オグリで猿之助兄さんと交互に主役を務めさせていただいたお陰で、スーパー歌舞伎と古典の共通点など、いろんなことに気が付かされ、教えていただくことが多かった。大きな節目になりました」
2020年は、1月2日から若手が中心の新春浅草歌舞伎で3演目に出演(26日まで)。「寺子屋」では武部源蔵を演じている。源蔵といえば重鎮が演じる役だ。
「お役をいただいたときは、正直、もうか、と。源蔵は酸いも甘いもかみ分けた男。26歳の僕がどう表現するのか……」
役作りについて考えこむ様子は真剣。日頃から、一人の時間には、古典作品に関する資料を手に入れ、研究に勤(いそ)しむ。
「昔の役者さんが書かれた歌舞伎の本を読むと、発見があって参考になるんです。勉強しないと、ついていけない世界ですから」と、厳しい表情になった。
テレビなど映像の世界での活躍も目立つが、仕事の中心は歌舞伎。究極の目標は、「歌舞伎界から必要とされる役者になる」こと。そして、海外進出だ。
「僕、大谷翔平さんが大好きなんです。野球でも企業でも、日本人はどんどん海外へ進出していますよね。歌舞伎も英語圏や中国、フランスにどんどん進出すべきだと思っています。(歌舞伎として上演された)ナルトやワンピースは海外でも有名ですから」
歌舞伎界の俊英がどう野望を叶えていくのか。今から楽しみだ。(本誌・工藤早春)
※週刊朝日 2020年1月24日号