水中で大事なポイントの一つは泳ぎを崩さないこと。高地は酸素が薄くて練習で追い込むと苦しいので、水をしっかりつかまない楽な泳ぎになることがあるのです。試合でいい泳ぎをすることが目的なので、高地で泳ぎを崩してしまっては元も子もありません。
東京五輪に向けて大きな環境の変化がありました。
19年10月、国内初となる高地トレーニング用の屋内プール(標高1735メートル)が長野県東御(とうみ)市に完成しました。11月下旬から約2週間、競泳ナショナルチームの合宿を行いました。8レーンの50メートルプールには筋力トレーニングのジムも併設され、歩いてすぐの宿舎は食事もいいと選手たちに好評でした。
今や五輪に向けて必要不可欠な高地トレーニングですが、これまでは海外に行く必要があり、長時間の移動と時差による疲労を回復するための工夫が必要でした。東御市の施設からは3時間で東京の五輪選手村に行くことができます。
私が教えている女子個人メドレーの大橋悠依、女子平泳ぎの青木玲緒樹(れおな)らは10月下旬から約3週間、シエラネバダの合宿で基礎体力をつけてから、東御市での合宿をこなし、12月に豪州の大会に出ました。
シエラネバダ→東御→大会というサイクルを有効に活用できるよう熟考を重ね、五輪本番前にも行いたいと考えています。
国内に高地トレーニングの施設があることのメリットは大きい。心強い味方を得たという思いです。
(構成/本誌・堀井正明)
※週刊朝日 2020年1月17日号