あとは、かたせ梨乃さんが出演された作品(94年公開の第47作「拝啓車寅次郎様」)かな。「夫婦になって長い間一緒に暮らしていればそりゃあいろんなことあるけどさ、お互い、相手を好きになろうと一生懸命思っていれば必ず何とかなるもんなんだよな」と満男に言う場面です。
──マドンナではどんな人が好きですか。
いしだあゆみさんが演じた役(京都の陶芸家のもとで働いていた女性かがり、82年公開の第29作「寅次郎あじさいの恋」)です。マドンナではないかもしれませんが、寅さんの母親(ミヤコ蝶々)も好きです。
──別の作品ですが、寅さんが「女の幸せは男で決まる」みたいなセリフを言ったとき、「あんたそんなこと言ってるから結婚できないのよ」とリリー(浅丘ルリ子)が怒るシーンもありました。
小樽の波止場のシーンですよね。リリーがプイッとどこかへ行っちゃう。
──75年に公開された第15作「寅次郎相合い傘」ですね。元号でいうと昭和50年。結構、時代を先んじたセリフです。
アバンギャルド(前衛)ですよ。あの時代、実際にまだ女の幸せは男で決まるみたいな時代でしたもの。
──「女性の自立」とか偉そうに表立って言わないけれど、伏線としてあの映画では描かれています。
そうですね。虐げられた女性像って描かれてないですよね。
──悲しい運命だけど立ち向かっていくというか。
私あれも好き。知床……。
──87年公開の第38作「知床慕情」! 三船敏郎さん演じる獣医が女性(淡路恵子)に愛を告白する。
あのときの淡路さん、ステキでした。かっこよかった。
──他方、寅さん映画には、めそめそしている男も結構出てきます。
だから、寅さんといれば何が起ころうと大丈夫なんじゃないかと思うのではないでしょうか。安心感があるのです。
ウドの大木ではなくて本当に行動に移して守ってくれる人、それが寅さんなんですよ。
──でも、最終的にリリーさんとは結婚しませんでした。
私、リリーさんって「女寅さん」だと思っています。あの2人、前世は双子の兄妹だったのかなとか。