伊東四朗さん (撮影/写真部・掛祥葉子)
伊東四朗さん (撮影/写真部・掛祥葉子)
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運転時認知障害早期発見チェックリスト30 (週刊朝日2019年12月20日号より)
運転時認知障害早期発見チェックリスト30 (週刊朝日2019年12月20日号より)

 3年前の79歳のときに運転免許を自主返納した喜劇役者・伊東四朗さん。車好きだったにもかかわらず、なぜ免許を手放すことを決断できたのか。

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 元々、大の車好きでしてね。モーターショーなんかは毎回行くくらいでした。国産車や外車、いろいろ乗っていましたよ。プライベートでの移動はもっぱら車。もちろん私の運転でね。でも、3年前に妻と一緒に運転免許を自主返納しました。私が79歳のときです。

 きっかけは75歳のとき、免許更新の際に受けた高齢者講習です。

 認知機能検査を受けたのですが、いきなりイラストなどが描かれている紙を見せられ、すぐさま隠される。時間がたってから何が描いてあったかを問われるものでした。健康状態には何も問題がないのに、突然試験される形にムカッときました。それに、これまで事故を起こしたこともなく、運転には自信がありました。

 それでも、71歳以上からはゴールド免許の有効期間が3年になると言われて、「ああ、私は高齢者なんだな」と気づかされたんです。自尊心を傷つけられましたが、数年たった今振り返ってみると、返納の判断は間違っていなかったように思います。

 運転をやめてからは、よく歩くようになりました。街中で走っている車に目をやると、高齢ドライバーをよく見かけます。どんな運転をしているのか観察していると、ブレーキのかけ方が怪しかったり、車間距離を詰めすぎていたり、流れに乗れていなかったり。自分はやめて正しかった、と実感します。

 今、1日に7千歩ほど歩くようにしています。最寄り駅の一つ前で降りて、1駅分歩くこともあります。これまでは玄関から車庫までくらいしか歩いていなかったから健康的でしょう。

 車がないことで、移動に不便を感じたこともありません。都会に住んでいることもあると思いますが、電車で十分なんです。運転していたころは、渋滞を考えて時間に余裕を持って出発すれば空いていたり、ギリギリに出たときに限って渋滞につかまったり。電車は時間どおりに来ますから、そういったイライラはなくなって、気持ちが楽ですよ。

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