ヨーロピアン・スタンダーズ/ヤン・ラングレン
ヨーロピアン・スタンダーズ/ヤン・ラングレン
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意外性に満ちたユニットの結晶
European Standards / Jan Lundgren

 近年ヤン・ラングレンの音楽活動は、自身が40歳を迎えたこととも関係するかのように、新しいステージに突入している。振り返れば94年にアルバム・デビューしたラングレンは、数年後に日本のレコード会社の制作によるリーダー作をリリース。たちまち北欧新世代正統派ピアニストとして認知された。今世紀に入っても日本との制作関係は良好を保っており、タイプは異なるがe.s.t.のエスビヨルン・スヴェンソンと並ぶスウェーデンの代表格と呼ぶに十分な実績を残してきたことは疑いない。

 ラングレンの新展開とは、ドイツ屈指のコンテンポラリー・ジャズ・レーベルACTとの関係が始まったことだ。母国の女性歌手イダ・サンド作への参加を皮切りに、2007年にはパオロ・フレス(tp)+リシャール・ガリアーノ(accordion,bandoneon)との共同名義作を録音。ラングレンにとっては初めての編成となる国際トリオの『マレ・ノストラム』は、3人のキャリアと音楽性の相違点を参照すれば意外性に満ちたユニットだが、彼らに共通する表現美が結晶した内容で、ラングレンの幅を広げる形となった。

 本作はラングレンの個人名義では初めてとなるトリオ・アルバムである。97年に母国の古謡などを集めた『スウェディッシュ・スタンダーズ』で高い評価を得たラングレンが、レパートリーを拡大したコンセプト作だ。トラディショナル限定ではなく、ロックや映画音楽もカヴァーする10ヵ国13曲で構成。メンバー既知のナンバーだけでなく、このプロジェクトのための選曲過程で知った楽曲も採用して、ヴァラエティー度が増したのも特徴である。ファンであるほど本作に驚かされる要素が多いはずだ。オープニングにクラフトワークを持ってきた意外性。電気的処理を加えたウッド・ベースやクラップで、早くも新味を打ち出す。テーマ・アレンジがさりげなく面白いミシェル・ルグラン曲#2、次々とリズムを変化させて現代的センスを表現するビートルズ曲#3、エレクトリック・ピアノで映画のイメージと重なるアンニュイなムードを醸し出す#7、ポーランドが生んだ最も偉大なピアニスト&作曲家クリストフ・コメダの代表曲を、優美かつメランコリックに綴った#11と、それぞれには関連性のない楽曲を、ラングレンのカラーで描いていて統一感を打ち出しているのが収穫だ。エスビョルン・スヴェンソンの#13を、本作唯一のピアノ独奏でカヴァーして、静かに幕を閉じるのも味わい深い。

【収録曲一覧】
1. Computer Liebe
2. Les Moulins De Mon Coeur
3. Here,There And Everywhere
4. A Csitari Hegyek Alatt
5. Stets I Truure
6. Yo Vivo Enamorao
7. Un Homme Et Une Femme
8. Reginella
9. Il Postino
10. September Song
11. Rosemary’s Baby
12. Wien,Du Stadt Meiner Traume
13. Pavane ? Thoughts Of A Septuagenarian

ヤン・ラングレン:Jan Lundgren(p,key) (allmusic.comへリンクします)
マティアス・スヴェンソン:Mattias Svensson(b)
ゾルタン・ソルツJr.:Zoltan Csorsz Jr.(ds,per)

2008年10月イタリア録音

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