ダイヤモンドの原石!まだ、広く知られていない邦人ピアニスト
Colors / Manami Morita
まだ日本では広く知られていない邦人ピアニストを紹介したい。米バークリー音楽大学を卒業したばかりの森田真奈美だ。
1984年埼玉生まれ。4歳からクラシックを始め、13歳でジャズに開眼。独学で吸収しながらバークリーの奨学金を得たというのだから、その時点でダイヤモンドの原石だったことは疑いない。
在学中はジャズ作曲科の際立った学生に与えられるハーブ・ポメロイ賞を獲得。今年ハンガリーで開催された国際コンペティションでは、自己のユニットで3位入賞し、アウトスタンディング・パフォーマー賞も受賞した。現在ボストンを拠点に、自己のグループでヨ-ロッパでの演奏活動も展開。まさに発展途上のミュージシャンである。
本作はそんな森田が自主制作でリリースした初リーダー作だ。一聴してわかるのは、上原ひろみからの影響関係。エネルギッシュ&パワフルなピアノ・プレイは「元気が出るピアノ」のキャッチ・コピーがある上原を想起させずにはおかない。実際のところ5歳年長の上原がデビュー作をリリースしたのは、森田がバークリーに認められる前であり、その意味で突然変異でない限り、森田が上原をアイドルとしていたことは想像に難くない。
自由奔放なピアノ・スタイルばかりではない。ピアノ+エレクトリック・ベース+ドラムスのトリオ・コンセプトにも、上原の影が感じられる。ただしこの点に関しては90年代のミシェル・ペトルチアーニの例もあるので、コンテンポラリー感覚のトリオと言うのが適切だろう。
森田のMyspaceでは、笑顔で収まる上原との2ショットが閲覧可能だ。作品評価のポイントとして目を向けるべきは、1曲を除いてオリジナル・ナンバーで固めた作曲の才能。フックを作りやすいアップ・テンポばかりでなく、ストーリー性を帯びたバラードでも聴かせどころを用意しており、自主制作とはいえプロフェッショナリズムを意識した音作りに新人の域を超えるスキルを感じた。
唯一のカヴァー曲であるスタンダード#4。実はこれ、上原の2008年発表作『ビヨンド・スタンダード』の収録曲でもある。緊急試聴した結果、両者はまったく因果関係のないトラックであることが判明した。森田を上原の亜流と見るかどうかは、あなた次第。ぼくは「期待」に1票を投じたい。
【収録曲一覧】
1.My Little Blue Sweetie
2.Jungle Book
3.Sleeping Tiger
4.My Favorite Things
5.Esp.
6.Interlude
7.Goodbye At 12:00 am
8.Goin’ Home
森田真奈美:Manami Morita(p) (allmusic.comへリンクします)
ザック・クロクサル:Zak Croxall(el-b)
ボブ・エディンガー:Bob Edinger(ds)
トーマス・ハートマン:Thomas Hartman(ds)
2009年作品