パワハラの相談窓口などのコンプライアンス(法令や社会規範の順守)体制が不十分な中小企業や教育現場、スポーツ界などでは、指導とハラスメントを混同したパワハラや、無視や陰口などのモラルハラスメント(モラハラ)問題が後を絶たない。
プロフィギュアスケーターの織田信成氏が、関西大学アイススケート部の監督を辞任したのは、同大所属のコーチによるモラハラが原因だったとして、慰謝料などを求める訴えを大阪地裁に起こした。
フィギュア界に詳しい作家の松井政就氏は言う。
「本来であれば大学が動かなくてはいけないが、関西大学に限らず、大学の事務局というのは実際は何の力もなく、織田氏はうやむやになるだけと思ったのでは」
スポーツ界のハラスメントをめぐっては、サッカー・Jリーグの監督によるパワハラ問題のように関係者の証言など明確な証拠がそろっていた場合を除き、選手が協会幹部や指導者を訴える形で表面化したケースで、訴えられた側が自ら非を認めたケースは少ない。
日本でパワハラが横行する原因として、日本アンガーマネジメント協会の安藤代表理事は「人権意識の低さ」を指摘する。上下関係をことのほか重要視してきた日本の風土の中で、相手の人格や尊厳を大切にする気持ちを持てない指導者や上司がいる限り、パワハラは野放しになったままだ。(本誌・小島清利)
※週刊朝日 2019年12月6日号