著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は、歌手でエッセイスト・アグネス・チャンさんの「ひつまぶし 名古屋 備長 マロニエゲート銀座1店」の「ひつまぶし」だ。
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ここはうなぎ好きの次男のためにふらりと入って以来のお気に入り。それまで私はうなぎが特別好きでもなかったけれど、こちらのひつまぶしと出合ってからはやみつきになりました。炭火で身も皮もこんがりと焼いてあるから香ばしくて、ちょっと濃いめの甘じょっぱいタレがご飯との相性抜群なんです。
ある時、長男が私の誕生日にサプライズがあるからと言って、自宅で大きな木桶をプレゼントしてくれました。何かしら?と思ってフタを開けてみたら、中にぎっしり「備長」のひつまぶしが詰まっているではないですか。お店に頼んで特別に作ってもらったらしく、あの時の感激は今でも忘れられません。
食べ方もユニークですね。最初はそのまま、次にネギやワサビを添え、最後に出汁をかけて三段階で楽しめます。これを人生に例えるなら、若い頃はありのまま素直に生き、年を重ねるごとに深みが増し、最後はきれいさっぱり人生を締めくくる──なんて、人生の哲学を感じるのは私だけでしょうか?
(取材・文/沖村かなみ)
「ひつまぶし 名古屋 備長マロニエゲート銀座1店」東京都中央区銀座2‐2‐14 マロニエゲート銀座1 12F/営業時間:11:00~15:00L.O.、17:00~21:30L.O.(金、土、祝前日22:00L.O.)/定休日:休不定(ビルに準ずる)
※週刊朝日 2019年11月15日号