「一方の悠仁さまは、国内各地を自発的に回り、ルーツが近いアジアの人びとや文化に触れる経験をなさった。従来とは異なる視点で世界を見すえ、日本という国の立ち位置を学んでおられます」(宮内庁関係者)

 秋篠宮ご夫妻は、悠仁さまが幼いころから国内各地の自然に触れ、土地の文化を学ぶ機会を積んできた。

 家禽類の研究で理学博士号を取得した秋篠宮さまは、動植物に造詣が深い。悠仁さまも幼いころから昆虫が大好きで、図鑑を熱心に読み、皇居でも池のまわりのトンボの観察や虫捕りに熱中した。ときには、明仁天皇と一緒に虫を捕まえたこともあった。

 また、悠仁さまが5歳の夏には、北海道を訪問。阿寒湖でマリモの観察や昆虫捕りをするなど自然に触れ、アイヌ文化を伝える人形劇を見た。7歳の冬には、沖縄に行き、沖縄や九州の在来家畜の与那国馬や島ヒージャー(ヤギ)、口之島牛に触れ合う経験もした。

 17年の10歳の夏には、「東京の島を見たい」と本人が希望し、紀子さまとふたりで東京・小笠原諸島の父島や母島を訪れた。一般客と同じフェリーに乗り、24時間の船旅をした。

 ブータンでも、トンボやセミに興味を示し、小型のデジタルカメラで熱心に写真を撮り、「このトンボは、日本にいるものとよく似た種類なんですよ」と池谷さんにも教えてくれたという。

 山腹のダムチナ村を訪れた際には、在来種の牛と触れ合った。秋篠宮さまの説明を受けながら、悠仁さまは搾乳を見学したという。

「子牛の飲む牛乳を少し減らして人間が分けてもらう搾乳は、人類の発明の一つです。機械化や家畜の品種改良が進み、牛乳を豊富に搾ることができる日本の搾乳に対して、厳しい自然のなかで生きる村人が牛と共存して『乳を分けてもらう』のがブータンの搾乳です」(池谷さん)

 同じアジア圏でも動植物の種には違いがあることや、生物の多様性や動物と人間の共存の起源といったテーマを肌で感じる得難い経験だったに違いない。

 さらに、印象深かったのは、民族衣装を着たブータンの王子と羽織袴姿の悠仁さまが並んだ場面だ。将来、国王と天皇になるふたりのプリンスが親善の第一歩を踏み出した旅でもある。

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