作家・室井佑月氏は「表現の不自由展」の補助金不交付の理由がはっきりしないと指摘する。
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国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の展示が10月8日、再開された。しかし、補助金不交付についてはそのままだ。誰もが納得するような説明もない。
萩生田光一文部科学相は9月27日の閣議後会見で、その理由について、「本来、(主催者の県が)予見して準備をするべきことをしていなかった」といってた。
悪いのは文化庁じゃない? じゃ誰の判断なんだよ。ニュースを知っている人で、なにが問題視されたのか、わからない人なんていまい。
不自由展では、慰安婦を表現した少女像や、昭和天皇の肖像を燃やすような映像の展示に批判や抗議が殺到した。会場にガソリンを持っていくなどの、犯罪予告もあった。そして、いったん中止となった。
が、文化庁がこの話の流れに乗るわけにはいかない。それではテロの脅迫に屈したということになってしまう。2020年には東京五輪も控えている。
では、なにが問題なのか? それは意外にも、10月9日に放送された「グッとラック!」(TBS系)の司会、立川志らく氏がはっきりいっていた。「萩生田さんでしたっけ? 手続きの問題で交付金を出さない、と。あれはちょっと卑怯(ひきょう)だと思ったんですよね。はっきり言えばいいと。自民党なりの国の考えを」
あたしは彼と考えが真逆であるが、この一点だけは一致する。
安倍晋三首相とその応援団は、日本が犯した負の歴史を認めようとしない。教科書からその部分を抜かせという者もいるし、教育勅語を現代の教育に生かせという者もいる。
皇室がそんなこと望んでいるか? 上皇さまは平和と、象徴としてのお立場を、最後まで大事にされた方である。
不自由展の補助金不交付の理由をはっきりいえないのは、世の中の反発を恐れてだ。歴史修正主義は世界中から白い目で見られるし、皇室の政治利用を指摘されるのもまずいだろう。