鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
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脚本を書いたリチャード・カーティス氏 (c)朝日新聞社
脚本を書いたリチャード・カーティス氏 (c)朝日新聞社

 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「今年一番おもしろかった映画」について。

【写真】「イエスタデイ」の脚本を書いたリチャード・カーティス氏

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 2019年、残り3カ月を切りましたが、今年、一番おもしろいと思った映画を紹介します。間もなく公開される「イエスタデイ」です。これは僕が世界で一番尊敬している脚本家・監督のリチャード・カーティスが脚本を書いている映画。この方、みんな大好き「ラブ・アクチュアリー」や「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」など、最高なラブコメ作品を数々作っております。

 で、この作品の設定が最高なんです。舞台はイギリスの小さな町。そこに住む物語の主人公、売れないシンガー・ソングライターのジャック。彼の幼なじみで女友達のエリー。エリーは売れないジャックのことを親身になって応援してくれるんです。ここにもうラブコメの太い線が張ってある。

 ある日、世界規模で原因不明の停電が起こり、ジャックはそのタイミングで交通事故に遭う。

 目を覚ますと、なんと、あのビートルズが存在してない世界になっていたのだ。

 となると、どうですか? 彼がみんなの前で「イエスタデイ」を歌うと、その歌の存在を知らないものだから「いい曲だわ~」となるわけです。彼がみんなの前でビートルズの曲を歌えば歌うほど世間から注目されていき、「天才だ!!」となるわけです。そして売れていく。だけど、それは自分の作った曲ではないという罪悪感。この設定が最高なんです。

 もちろん細かい部分でツッコミどころもあるんですが、そんなことは気にならないおもしろさ。女友達エリーは、売れないジャックを応援していたのだが、売れてしまったジャックと距離ができていってしまい……。と、ラブコメのベタな線が生きてくる。もう見終わって、北島康介ばりの「超気持ちいい!」が飛び出しました。見て、気持ちいいんです。

 ビートルズをあまり知らない人はラブコメディーとして、ビートルズが大好きな世代の方々は音楽劇として。世代によって楽しみ方がかなり変わってくると思います。

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