藤井教授によると、これから消費と実質賃金が落ち込むという。
「実質賃金が2%下落すれば、年500万円の所得がある人は確実に10万円は失う。賃金が下がると消費が下がり、消費が下がると賃金も下がるというデフレスパイラルが進行します。トータルでは実質賃金はおよそ4%は減ると私は見ています。所得が年500万円の人は20万円の現金が入った財布を落とすのと同じです。それが毎年続くと考えて下さい。国民生活には相当の痛手となり、貧困化が進みます」
藤井教授は、日本経済の余裕がない最悪のタイミングで増税が行われたと指摘する。
「今年、百貨店の閉店数は2ケタになりましたが、リーマン・ショック以来のことです。リーマン・ショック級の冷え込みがあるなかで増税を行うのですから、日本経済は破壊的なダメージを受けます。はっきり言って、これは人災です。政権によって引き起こされた経済災害なのです。中長期的に見れば、消費増税のせいで税収が減り、社会保障費の財源が縮小します。多くの人は景気が悪くなっても、財政の健全化のために増税が必要だと思っていますが、それは大きな間違いです」
欧州などでは消費税率は日本より高く、増税は世界的潮流だとも言われるが、藤井教授はこう反論する。
「増税すべきかどうかの判断は、税率が高いか低いかではありません。ひとえに景気がいいか悪いかだけです。景気が悪い時に増税をすると、経済は確実に疲弊します。景気が良ければ増税しても大した影響は受けません。マレーシアや英国などでは景気の低迷期に減税しています。景気が悪い時に増税するのは理性がないとしか思えません。政府は機動的な経済対策を実行し、『万全を期す』と言っていますよね。そうであるならば、消費の下落もないでしょう。メディアはそこを検証するべきです。万全を期していたかどうかは、今年中に分かるはずです」
藤井教授によると景気は失速し、経済不安が高まるのは避けられないという。
「海外を見渡しても、米中貿易戦争や中国経済の失速、ブレグジット(英国のEU離脱問題)などリスクが高まっています。2014年に5%から8%に引き上げた時は、輸出額が伸びたおかげで景気は何とか持ちこたえました。しかしリーマン・ショック以降、回復してきた世界経済は曲がり角に来ています。もはや、外需に期待することもできません。今回の増税をきっかけに、日本経済が急速に衰退していくことは火を見るよりも明らかです」
藤井教授に限らず、消費増税に警鐘を鳴らす経済学者やエコノミストは多い。政府が主張するように景気は落ち込むことはないのか。厳しくチェックしていくことが、私たち有権者に求められている。
(本誌・亀井洋志、多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事