へいらでんはいのはっかくきょう
唐時代・8世紀 正倉院宝物
背面に装飾を施した宝飾鏡の代表作。銅で作られ、花のような膨らみがある。琥珀(こはく)と螺鈿(らでん)を組み合わせて、宝相華(ほうそうげ)と呼ばれる、天上の世界に咲く空想の花を優雅に描き出している 【後期展示11月6~24日】(写真提供:特別展「正倉院の世界」)
年に一度、正倉院の宝物が特別に公開される正倉院展。今年は天皇の即位を記念し、東京でも正倉院宝物と法隆寺献納宝物を間近に感じられる正倉院の世界展が開催。悠久のときを超えた秘宝が一堂に会する。
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正倉院は東大寺大仏殿の北西に位置し、聖武天皇や光明皇后ゆかりの品々をはじめ、東大寺の宝物や文書など、奈良時代以来の文物が収められていた。高床式校倉造りの建造物は、1998年に「古都奈良の文化財」の構成資産の一つとして世界文化遺産に登録されている。
正倉院の宝物は、756(天平勝宝8)年、光明皇后が聖武天皇の七七忌(四十九日)の際に、天皇の遺愛品を東大寺の大仏に奉献し、それらの品を収蔵したことに始まる。
今に伝わる宝物の数々は、国内はもとより唐、中央アジア、ペルシャなどからももたらされており、当時の世界の文化を代表する文物といえる。
これらの宝物を例年秋に公開するのが「正倉院展」で71回を迎える。今回は天皇の即位を記念し、正倉院宝物の成り立ちや由来がわかるもの、正倉院を代表する宝物が一堂に会する。
さらに、東京国立博物館では「正倉院の世界」展も同時開催。これら展覧会は8世紀の日本と世界の華やかな文化を知る、またとない特別な機会である。
(文/鮎川哲也・本誌)
※週刊朝日 2019年10月4日号