![ネヴァー・キャン・セイ・グッドバイ/トレインチャ・オーステルハイス](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/b/4/240mw/img_b4e988a4ccd0c3fbcac4b36f4bbc6b1512891.jpg)
アイデアがたくさん詰まったこのマイケル・トリビュート作
Never Can Say Goodbye / Trijntje Oosterhuis
2枚のバート・バカラック集が評判を呼び、バカラックの東京公演にもゲスト出演したオランダの歌姫だ。ライオネル・リッチーの新作『ジャスト・ゴー』に参加したことでも、活動の場を広げている。
この新作は昨年リリースされた2枚組ライヴ『Ken Je Mij』と同じく、ギタリスト=レオナルド・アムエドとのデュオ。前作は過去のスタジオ作を踏まえて、バカラック・ナンバーを中心とする選曲だった。
では果たして今作は? 昨年6月25日の悲劇的な出来事が、アルバム制作のきっかけとなったという。少女時代からファンだったトレインチャにとってマイケル・ジャクソン急逝で受けた衝撃が、計り知れないものだったことは疑いない。しかし悲しみのどん底の日々はやがて、追悼作の企画立案へと方向転換。現パートナーとの共同プロデュースにより、本作が完成したというわけだ。
長年の熱烈なファンだけあって、ジャクソン・ファイヴ時代からソロ・アルバムまでのレパートリーから選曲。それにしてもマイケル・トリビュート作にヴォーカル&ギターだけで挑むのは、いかにもハードルが高い。人脈をフル活用して、特別に豪華なプロジェクトを組むことも可能だったはずだ。しかしこの最小編成にこだわった理由を探れば、現在の等身大のレギュラー・ユニットでこの大テーマを自分らしく実現させることを優先させたのではないだろうか。
『スリラー』収録曲#2だけで、このプロジェクトに臨んだトレインチャの、揺ぎ無い信念が感じられる。バック・ヴォーカルを自らの多重録音で作り込んだのも、自分らしさを表現するためのこだわりに違いない。聴き進めればギターも多重録音だと明らかになって、いよいよ本作はトレインチャとアムエドとの密なコミュニケーションから生まれた成果だと実感できる。
高揚感満点のメドレー#8に進むと、トレインチャは最小編成で最大の効果を生むというハードルを自らに課したのではないかとも思えてくる。キャンディ・ダルファーの助演が嬉しい。同業者にとっては利用できそうなアイデアがたくさん詰まったこのマイケル・トリビュート作。そのオリジネイターであるトレインチャの名誉は、ここにしっかりと刻み込まれた。
【収録曲一覧】
1. Never Can Say Goodbye
2. Baby Be Mine
3. Music & Me
4. Lady In My Life
5. I Want You Back
6. One Day In Your Life
7. I Just Can’t Stop Loving You
8. Don’t Stop Till You Get Enough/Working Day & Night/Wanna Be Startin’ Somethin’
9. Can’t Help It
10. Rock With You
11. Human Nature
12. I’ll Be There
13. You Were There
トレインチャ・オーステルハイス:Trijntje Oosterhuis(vo) (allmusic.comへリンクします)
レオナルド・アムエド:Leonardo Amuedo(g)
キャンディ・ダルファー:Candy Dulfer(sax)
2009年オランダ録音
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