一方、日本と同様に国交がないフランスとは民間交流は盛んで、フランス部署ではよくフランスの民間団体と電話しているという。
「私たちもいつまでも、語りにくいことを語りにくく話すのではなく、『来年の予算どうする?』という、普通の話をしたいですね」
真摯に語る彼に、私も自由に質問した。なぜオリンピックの応援に美しい女性を集めるのですか? 女性政治家は何パーセント? なぜ指導者は世襲なのか? 辛抱強く答えてくれた彼だが、「世襲」と私が使った時はサッと顔色を変えた。
「私たちはあまりにも違う社会を生きている。そのことを理解してほしい」
話しにくいことを、話しにくいまま真摯に語る人。その力を、日本に生きる私たちは持っているか。
平壌の空は高く、夏が永遠に続きそうな力強い太陽だった。「皆さんのために晴れにしました。私たちには天気を操作することができるんですよ」と彼は同じジョークを何度か言った。なにそれ、北朝鮮ジョーク? 私は驚き、声をあげて笑いながら、今を生きる私たちが語らなければいけない、出会わなければいけないものの大きさに圧倒されるような気分になる。
※週刊朝日 2019年9月20日号