

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「宿題」。
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中3の時だったか。夏休みの国語の宿題で「百人一首を覚えてくる」という課題が出た。宿題はそれだけではない。漢字の書き取りやら、数学のドリルやら、細かくは思い出せないが、たくさん出た。中3だから受験のはずなのに容赦ない。受験勉強プラス宿題。けっこうハードな夏休みだ。
中学時代の私は勉強が出来た。「自慢ではないが」などと謙虚なことは言わない。自慢。定期テストでは学年で常に1番か2番。頭の良い川上くんだった。もう一度言う。自慢。
我が家にはまだクーラーがなかったので、夏休みは朝9時に街の図書館へ。ガスガスと宿題をやっつけていく。昼時に帰宅。『笑っていいとも!』を観ながらソーメンかカレーを食べ、食後はTBSの昼ドラ『天までとどけ2』を観る。「高校の先生と結婚した長女・待子は夫のザイール転勤に付いていって、この後どうなるのだろう?」。『天までとどけ』の主題歌、川越美和の「涙くんさよなら」は退屈な夏の清涼剤だ。ちなみにこの高校教師役は竹内力さんであった。後の竹内さんのVシネでの活躍を思うと月日の移ろいは激流の如く。少しの休息ののち再び図書館へ。カリカリと宿題をこなす。夕方ごろには右手の小指の腹はシャーペンの芯で真っ黒だ。今日も頑張った。洗面所で手を洗いながら満足感に浸り帰宅する。