2017年に他界した名ギタリスト、松木恒秀が率いたバンド、What is HIP?とはジャズやポップスのスタンダードを4曲収録。
「松木さんは達郎と私をとてもかわいがってくださっていました。達郎の1978年のライヴアルバム『IT’S A POPPIN’TIME』でも彼のすてきなギターを聴けますし、私も楽しいレコーディングの思い出をたくさんいただきました」
ナット・キング・コールの歌で知られる「(I Love You)For Sentimental Reasons」で、松木はコーラスもやっている。
「松木さん、ほんとに歌えるの?」
竹内は松木の体を案じた。松木はがんを患い、状態はかなり進行していた。
「この曲が松木さんとのラストセッションになりました。彼のコーラスを入れるときにバンドメンバーはいなかったので、この音源を聴いたら、みんなびっくりすると思う。メモリアルな作品になりました」
1970年代の竹内のアルバムで演奏し、ツアーも一緒にまわっていたバンド、センチメンタル・シティ・ロマンスとも、ウェストコーストのナンバーを2曲一緒にやっている。
「センチは私が思う日本で最もウェストコースト・サウンドがうまいバンドで、彼らの演奏とコーラスには特別な空気感をいつも感じるんです」
ヴォーカルはすべて竹内。しかし、バンドが変わると、歌も違う表情を見せる。BOXとのビートルズ・ナンバーからは、港町リバプールの匂いを感じる。What is HIP?とザ・バンドの「Out Of The Blue」を歌うと、アーシーにもなる。センチメンタル・シティ・ロマンスとともにイーグルスの「Tequila Sunrise」を歌うと、アメリカ西海岸のさわやかな風が吹く。
そして、「Premium Covers」のラストには、竹内と山下のデュエットで、ライチャス・ブラザーズらが歌った「For Your Love」が収録されている。
「私たちは結婚式の披露宴でデュエットを所望されることが多くて、よくエヴァリー・ブラザーズがヒットさせた『Let It Be Me』を歌っていました。新郎新婦をお祝いするにはぴったりの曲です。それでも、もう少しレパートリーを増やしたいね、と二人で話して、3曲レコーディングしたうちの一つが、この『For Your Love』でした」
オリジナルの作品をつくって歌い、ソングライターとしてほかのシンガーにも作品を書き、ミュージシャンとしての原点となった曲をカバーし、竹内はキャリアを重ねてきた。