TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は藤山直美さんについて。
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飲み友達で、ごく親しい阪本順治監督作品の「顔」や「団地」を何度も観て、主演された藤山直美さんにずっとお会いしたいと思っていた。
先日、番組「ディアフレンズ」に来ていただいた。
ブルージーンズにラルフローレンの白いシャツという出で立ちの彼女は、大女優を前にして、幾分緊張気味の番組パーソナリティの坂本美雨さんに「なんでそんな可愛い声してはるの? 私の声は新宿2丁目だわ」と話しかけ、スタジオが和んだ。
1958年12月28日生まれ(「ぎりぎりで生まれてしまってスミマセン」とご本人)の藤山さんは子役として64年デビュー、舞台、映画、テレビドラマで活躍、2017年病を得て休養後、昨年「おもろい女」で舞台に復帰し、「芸術祭賞大賞」「芸術選奨文部科学大臣賞」をダブル受賞した。
そしてこの夏、新橋演舞場での「笑う門には福来たる~女興行師 吉本せい~」で、桂春団治、エンタツ・アチャコ、笠置シヅ子といった日本のエンタメ界を彩った芸人たちとの交流を交えながら、吉本興業創始者の生涯を演じた。
機知に溢れた言葉のプロの藤山さん、リスナーの心をつかむ言葉がぽんっと出てくる。
「(自分が演じた吉本せいの人生は)『人との別れ』でできている。可哀そうな人なんです。夫は早くに亡くなった。子供も亡くされて……。心を寄せた人物もこの世を去ってしまう。家では泣き、でも、一歩外へ出ると、『笑い』を商売としていた。涙を隠して芸人さんを盛り上げていった」
舞台はコメディである。でも、喜劇だからこそ、そこに人間の「悲しみ」を出したいという。そして、心の無垢さも。
「芸人を無垢に愛する心、家族を無垢に愛する心がある。その心にみんながついていったと思うから」
舞台は客とのやりとりだとも。