業績不振、大規模リストラ。米国代表銘柄の悲報が相次ぎ、株価も下落。NISAで人気の投資信託にも影響する話だ。AERA2023年2月27日号の記事を紹介する。
【写真】マネックス証券チーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎さん
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「S&P500」の投資信託を日本人はこぞって積み立てている。つみたてNISAの一番人気は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」。2月14日の純資産総額は1兆8197億円で、日本一巨大な投資信託となった。基準価額も近年の上昇は凄まじく、2021年には「S&P500はもはや預金」というツイートも見かけた。
景色が一変したのは22年1月以降。今年1月中旬から反発色を強めているが、22年の1年間、S&P500は下がり続けた。下落の大きな要因は、S&P500の上昇を牽引するGAFAM(グーグル=アルファベット、アップル、フェイスブック=メタ・プラットフォームズ/以下メタ、アマゾン、マイクロソフト)の凋落だ。これら5社と肩を並べるテスラの株価も年間下落率69.2%。
■業績不振にリストラ
業績が芳しくない。直近発表を見るとアップルは第1四半期、減収減益。グーグルの持ち株会社・アルファベットの第4四半期は1%増収、34%減益。アマゾンは同8.6%増収、98.1%減益と激減。マイクロソフトの第2四半期決算は2%増収、12%減益。メタの第4四半期は4.5%減収、54.8%減益(2月1日に400億ドルの自社株買いを発表し翌日から急騰)。テスラは37.2%増収、58.9%増益となったが株価の下落率はワースト1だ。
業績不振に加えて、アップルを除く4社が大規模な人員整理(4社合計で5万人超)をしたことも報じられた。この情勢を踏まえ、「GAFAMやテスラの成長神話は崩壊」との声も聞こえる。マネックス証券チーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎さんの意見はどうか。
「米国の利上げに伴い、景気が減速気味です。たとえばアルファベットの売り上げは8割が広告収入によるもの。景気後退となれば、企業の広告出稿が減るのではという懸念から売られたわけです。メタの広告収入は売り上げの97%を占めています。広告に頼るビジネスは景気の上げ下げに株価が反応しやすい」
■下落は日常茶飯事
アップルは中国でiPhoneの生産が滞った件が足を引っ張ったようだ。アマゾンはコロナ禍におけるネット通販需要の拡大を受けて流通設備などへの投資を拡大したが、使ったカネに見合う収益には届かず。
「とはいえ、今後もネット通販の需要は伸びます。アマゾンの投資は長期的にはプラスに働く公算大です。一方、テスラの株価下落は、トップであるイーロン・マスク氏のツイッター買収騒動により“本業がおろそかになるのでは”と懸念されたことが影響しているようです」
テスラは中国のEV(電気自動車)台頭による競争激化も悲観される。実のところ、それは前向きな話と岡元さんはいう。
「競合が生産を急拡大しているのは、電気自動車の市場が伸びているからこそ。低下したとはいえ、テスラの利益率は他の自動車メーカーよりもはるかに高いのです。22年第3四半期決算の時点でトヨタの約8倍。競合他社と違って広告宣伝を一切行っていませんが、それでもテスラのEVは選ばれている」
そもそもGAFAMやテスラの株価は昔から値動きが派手。岡元さんが00年以降の年間変化率を見せてくれたが、80%下がった年もあれば200%上がった年もあり、22年の下げは長期で見ると珍しくない。
「時価総額が非常に大きい=流動性が高いだけに、市場全体が下がる局面では率先して売られがち。相場格言通り、“山高ければ谷深し”なのです」
忘れられがちだが、GAFAMやテスラへの投資は典型的なハイリスク&ハイリターンである。GAFAM+テスラの成長拡大が続けば、米国株一辺倒の投資も成功する可能性が高い。その逆もしかり。岡元さんによれば、(1)テスラ、(2)アマゾン、(3)メタ、(4)アップルの順で今後も高い成長を期待できるという。マイクロソフトは他の5社と比べて“成長”という意味では安定的だ。アルファベットは、「ChatGPT」などのAIチャットボットに対抗する新サービス「Bard」の一般公開を発表したが、今後もグーグル一強が続くとは断言しづらい。