2022年は、米国の主要30銘柄で構成されるNYダウも安値を更新。米国の個別株や海外ETFをドル建てで保有する人は肝を冷やしたはず
2022年は、米国の主要30銘柄で構成されるNYダウも安値を更新。米国の個別株や海外ETFをドル建てで保有する人は肝を冷やしたはず

 S&P500のインデックス型投資信託に積み立てている人は、米国株の全体的な成長に懸けていたはず。だが、S&P500はGAFAM+テスラの動きに左右されすぎる。そこで、1級FP技能士の古田拓也さんのアドバイスを元に検証した。S&P500をS&P5(GAFAM)とS&P495(それら以外)に分解、日本株=TOPIX(東証株価指数)と共に比較したのが冒頭のグラフだ。

「鋭角的なS&P5に対し、GAFAM抜きのS&P495は緩慢で、TOPIXと大差ありません。GAFAM5社がS&P500の時価総額全体に占める割合は22年12月末時点で18・4%、テスラを入れても19・5%なのですが、これら6社の米国株市場全体への影響力は絶大だったことがわかります」

 なお、GAFAMにテスラを加えた“S&P6とS&P494”でもグラフを作ったが、チャートの形は変わらなかった。

 もっとも、古田さんはこの検証の弱点も把握している。S&P495とTOPIXの比較は公平ではない。この場合のS&P495は、GAFAM無しの“牙を抜かれた虎”。対するTOPIXは、トヨタやソニーなど日本株を牽引する銘柄が入った“牙ありの”。よってGAFAM抜きだと日本株と値動きが変わらない、という結論は早計だ。岡元さんも言葉を添えた。

「S&P500とTOPIXはどちらも各銘柄の時価総額を加重したうえで平均値を算出しています。実際にはS&P495の中にも株価の上昇が顕著だった銘柄が少なくありません」

■インドや中国の台頭

 GAFAM+テスラの米国株への影響度は理解できたが、問題は「米国株一辺倒の投資でいいのか」ということ。米国株100%の投資信託だけを買う人は多い。もしGAFAMやテスラの成長が止まったら? 新たなスター株は出てくるのか? 古田さんは語る。

「正解のない問いですから、米国株だけに投資することを否定はしません。下落中に積み立てを続ければ安値で仕込める。ただ、たとえばインドのムンバイSENSEX30指数は史上最高値を更新しています。米国株一辺倒だと、こうした新興株の動きを享受できない」

 そう考えると、S&P500より「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(以下オルカン)など世界中の株に投資する投資信託が初心者には無難。実際、“米国株一辺倒”を懸念する層などが全世界株式を買っており、S&P500の投資信託を猛追。オルカンの純資産総額は9042億円だ(2月14日)。

 全世界株式は好調な国の株が自動的に多く入る仕組み。米国株は全体の約60%入っている。次に多いのが日本株で5%超、その次が英国株の約4%だ。

 これに対し、S&P500と新興国株式への投資を組み合わせるのも有効と岡元さんは説く。

「この先、中国やインドはさらに飛躍するでしょう。米国もそれら2カ国と共に3強であり続ける可能性は高い。全世界株式だと新興国の比率が数%と低めですから、S&P500と新興国株式の投資信託を組み合わせるのも一考です。新興国株式は全体の1~2割に抑えましょう」

(金融ジャーナリスト・大西洋平、編集部・中島晶子)

※AERA 2023年2月27日号より抜粋

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