カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
イラスト/カトリーヌあやこ
漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「『バリバラ』ゲスト田代まさし 『教えて★マーシー先生』の回」(NHK・Eテレ 7月4、11日20:00~)をウォッチした。
【画像】カトリーヌあやこ氏がみた「バリバラ」でのマーシー先生の表情は…
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「バリバラ」とは「バリアフリー・バラエティー」の略。「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティー」をテーマとしたこの番組に、田代まさしが登場した。
薬物依存症の特別授業ということで、マーシー先生(田代)は開口一番「ピエール淳之介です」。いくらスポンサー関係ないからって、生き急ぎすぎだろうNHK・Eテレよ。
そして薬物蔓延の現実として流れる映像は、連行されるピエール(瀧)。土下座する(田口)淳之介。晒す、晒すね。大河ドラマ「いだてん」のピエール降板、いまだに根にもってそうな空気をひしひし感じる。
なぜ薬物にはまったか。それは「常に面白いことを言わなきゃいけない」という強迫観念からの逃避だったと、マーシー先生は語る。そのしゃべり、ほとんどロレツが回ってない。
MCの山本シュウがすかさず「今日あんまりロレツが回ってないんですけど、(クスリ)やってるんですか?」と、つっこめば、マーシー先生いわく、
「手が震えて大丈夫ですか?と、よく聞かれるんですけど、(クスリ)使ってる時はピタッとそれが止まるんです。きれいにしゃべってる方が怪しいんです」
面白おかしく語るけど、塀の中でマーシー先生がずっと考えていたこと。それは、「クスリやりてぇ!」。
身もフタもねぇ。
依存症は自分の意志だけで治せるものではない。番組では、メディアによるバッシング報道や、リハビリ施設の現状についても取り上げられ、当事者の声が紹介された。
最後にスタッフから「田代さん、爆笑ギャグでしめて」のフリップが出される。笑いを求められる恐怖からクスリにはまった男は、やはり笑いから逃げられない。
終始震えている先生は、さらに震えながら言った。
「ダルク(リハビリ施設)で、外出して帰ってくると『マーシーお帰んなさい』って言われる。その『お帰んなさい』が『コカイン買いなさい』って聞こえる」
捨て身のギャグに出演者やスタッフが笑う。怯えと嬉しさが混ざり合うマーシー先生の表情。それがとても生々しく物悲しい。そんな恐ろしい番組。次は清原和博先生でお願いします。
※週刊朝日 2019年8月2日号