正子は仲間と一緒に、自宅をお化け屋敷のテーマパークにして乗り切ろう、と企てる。「マジカルグランマ(理想のおばあちゃん)」ではなく、周りを巻き込みながら、したたかに逆境を乗り越えていく。
柚木さんは大学卒業後、洋菓子メーカー勤務などを経て20代後半で小説家デビュー。山本周五郎賞を受けた『ナイルパーチの女子会』やテレビドラマにもなった『ランチのアッコちゃん』など多彩な著作で知られる。
自身も通った東京・恵泉女学園の創立者、河井道を小説にする構想を広げている。1877年生まれの気骨の人が女性の教育の普及に人生をかけた。そんな歩みを大きなスケールで、かつエンタメとして描きたいという。
「次は10代の女子、なかでも勉強が苦手だったり、夢を抱けなかったりする人にこそ、学びがおもしろくなるものにしたいんです」
世代を超えて目配りをするストーリーテラー。直木賞を受賞したら子連れで会見に行くかも、とユーモアを込めて語っていた。そんなときが早く来るといい。(本誌・木元健二)
※週刊朝日 2019年8月2日号