野尻哲史(のじり・さとし)/1959年、岐阜県生まれ。2019年5月から、運用・移住・仕事など多面的に退職後のお金との向き合い方を発信するフィンウェル研究所の代表。主な著書に『定年後のお金』(講談社+α新書)、『脱老後難民』(日本経済新聞出版社)など (撮影/写真部・掛 祥葉子)
野尻哲史(のじり・さとし)/1959年、岐阜県生まれ。2019年5月から、運用・移住・仕事など多面的に退職後のお金との向き合い方を発信するフィンウェル研究所の代表。主な著書に『定年後のお金』(講談社+α新書)、『脱老後難民』(日本経済新聞出版社)など (撮影/写真部・掛 祥葉子)
この記事の写真をすべて見る
全国のキャッシュレス決済比率 (週刊朝日2019年7月26日号より)
全国のキャッシュレス決済比率 (週刊朝日2019年7月26日号より)

 フィンウェル研究所代表の野尻哲史さんが、「定年後の生活」について綴る「夫婦95歳までのお金との向き合い方」。今回は「キャッシュレス社会と向き合う」。

【図表で見る】全国のキャッシュレス決済比率はこちら

*  *  *

 今年10月に予定されている消費税率の引き上げとともに、キャッシュレス社会が到来するという声が大きくなっています。

 クレジットカードやスマホ決済であれば、消費税の引き上げ分相当のポイントを還元するといった政策が発表されて、個人も小売業者も利用にかなり前向きになっているからです。

 さらに、PayPayやLINE Payといったスマホ決済の企業が、総額300億円といった巨額のキャンペーンを実施、それが大々的に報じられたことも拍車をかけているように思います。事実、私も最近LINE Payを使うようになりました。

 日本の現金を使わないで決済する比率、すなわちキャッシュレス決済の比率は極めて低い状況です。経済産業省が2018年4月に公表した「キャッシュレス・ビジョン」によると、韓国の同比率は89.1%と非常に高く、中国でも60.0%に達しています。さらに英国54.9%、米国45.0%ですが、日本はわずか18.4%にすぎません。

 ただ、ちょっと気になるのは、こうしたキャッシュレス決済が持つ消費を促す効果です。まあ、平たく言えば、使いすぎるようになる傾向です。皆さんは現金で支払うときとクレジットカードで支払うときで、支払うときの躊躇感に違いはありませんか。交通系のプリペイドカードに入金してしまうと、比較的気楽に使っていませんか?

次のページ