日産は、経営者の暴走を防ぐ対策になるとして、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行する。指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置して権限を分散し、チェック機能を強化する。
こうした指名委員会等設置会社の導入は、上場企業約3600社のうち70社程度にとどまる。各委員会の過半数を社外取締役にする必要があるため、社外の人材確保が難しいことも導入が進まない要因だ。経営トップが自分に都合のいい社外取締役ばかり選ぶと、各委員会が形骸化する恐れもある。
前出の大杉さんは、経営トップの暴走を防ぐ仕組み作りが遅れていると、警鐘を鳴らす。
「日本では誰かが暴走するのを牽制(けんせい)する仕組みについて、多くの会社で議論されていないのではないでしょうか。議論自体がはばかられている会社が、多くあります。まずは議論することから始める必要があります」
前出のつばめ投資顧問の栫井さんも、改善が必要だと訴える。
「単なる景気回復で業績が良くなっても、経営者の功績とは言えません。業績を短期的に良く見せかけることも可能です。株主が高額報酬に歯止めをかけられる仕組みを検討しなければならない時期に来ているのでは。経営者に報いるなら、欧米のように株式で与える方法もあります。与えられた株式を10年間は売却できないようなルールにすれば、長期的な視野で経営しやすくなります」
株主だけでなく従業員や消費者も、経営者の報酬が適正かどうか目を光らせることが求められる。企業は株主だけのものではなく、社会的な責任があるからだ。
経営者の報酬は、これからも定期的に公表されていく。今回のランキングも参考に、経営者のもうけすぎについて、みんなで考えたい。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2019年7月26日号