高額報酬を巡っては批判が強まっている。従業員の給料の伸びは抑えられ、経営者ばかりもうけているとの見方だ。報酬に見合う仕事をしているのか、わかりづらいことも問題となる。報酬は高額なのに、巨額の損失を招いたり、不祥事を防げなかったりした経営者も相次いでいる。
最近では、前出の武田の株主総会が話題になった。巨額損失や不祥事が生じたときに役員報酬の一部を会社に返還させる、「クローバック条項」を導入するよう株主が提案したからだ。武田は約6兆2千億円を投じてアイルランドの製薬大手を買収したが、その経営判断について不安が出ていることも、株主提案の背景にあるとみられる。「取締役の経営判断が不必要に保守的になり、結果的に株主の利益にならない」などとして、経営陣は導入に否定的だった。
総会では過半数の賛成は得たものの、定款変更に必要な3分の2以上の賛成に届かなかった。
大杉公認会計士事務所の大杉泉所長は、クローバック条項は欧米で先行して導入されているという。
「日本ではみずほフィナンシャルグループなど導入事例が10社にも満たない状況です。役員報酬に占める業績連動の比率が欧米よりも小さく、払いすぎた報酬を取り戻すという概念がなじみにくい」
役員報酬を巡って批判が高まるのは、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の事件も大きい。ゴーン前会長の収入は約16億円で12位。有価証券報告書への過少記載などが問題視され、現在は刑事被告人の立場だ。
渦中の日産の西川廣人社長は総額の上位50位には入らなかったが、役員報酬だけで約4億円もらっている。
西川社長は、ゴーン前会長の不正行為を経営トップとして認識していたのではないかと指摘されている。さらに、自分が購入する自宅の資金を会社側に出させようとしていたとの疑惑も浮上した。ゴーン前会長とともに逮捕、起訴されたグレッグ・ケリー前代表取締役が、「文藝春秋」で疑惑を語っている。日産広報担当者は、「あくまでケリー被告の発言であり特にコメントはない」としている。