Q:ソウル・ボサ・ノストラ/クインシー・ジョーンズ
Q:ソウル・ボサ・ノストラ/クインシー・ジョーンズ
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喜寿を迎えた大御所の総決算
Q: Soul Bossa Nostra / Quincy Jones

 クインシー・ジョーンズ、実に15年ぶりの新作である。この間《モントルー・ジャズ祭》で音楽生活50周年記念ライヴを行い、音楽出版事業に取り組む一方、世界中の困窮する子供たちのための義援活動にも心血を注いできた。オバマ大統領に内閣芸術長官の設置を進言したのも、大物プロデューサーならではの出来事だった。

 完成まで7年間を費やした本作は、主にブラック~ヒップホップ系のヴォーカリスト/ラッパーをフィーチャーしたセルフ・カヴァー集。クインシーの楽曲、アルバム収録曲、プロデュース曲に新たなアレンジが加えられている。

 前作『Q’s ジューク・ジョイント』も<スタッフ・ライク・ザット>等のリメイク曲が含まれていたし、ジャズ&フュージョンとブラック畑のミュージシャンが大挙出演していた。今回は前者に属す名前はほとんど見当たらず、後者を前面に立てたヴォーカル・アルバムを企図したと思われる。

 #1は71年作『スマックウォーター・ジャック』収録曲のオリジナル・トラックに、タリブ・クウェリのラップをかぶせたもの。ガレスピー、マイルス、フレディ・ハバードといった人名も飛び出し、クウェリが原曲をリスペクトした上で個性を発揮する姿勢が伝わってくる。でも全曲がこのような合成手法だったら・・・と一瞬不安がよぎったが、杞憂だった。すでに先行シングルとしてリリースされていた#2は、歌詞とコーラスに独自の工夫が施されて、甘い歌声と共にエイコンが魅力を発揮。リュダクリス+ナチュラリー7+ルディ・カレンスの#3は<ソウル・ボサ・ノヴァ>の改題曲で、タイプの異なる男声たちのハーモニーが楽しい。ブラザーズ・ジョンソンのヒット曲#7は本作では数少ないバンド仕立ての演奏で、スヌープ・ドッグが新しいリリックと共に貫禄のラップで帝王を讃える(同曲を演じたデヴィッド・レターマン番組@YouTubeは必見)。個人的にはT-ペインとロビン・シックが共演したマイケル・ジャクソンの#12がベスト・トラックだ。他にもビヨンセ主演映画『ドリームガールズ』で驚異的な歌唱力を印象付けたジェニファー・ハドソン、パティ・オースティン歌唱の原曲#9をカヴァーしたことが感慨深いメアリー・J. ブライジらが、クインシー・ファミリーとして適材を演じる。

 喜寿を迎えた大御所が音楽家生活の最終章を意識したに違いない、総決算的な色合いを帯びる新作だ。

【収録曲一覧】
1. Ironside
2. Strawberry Letter 23
3. Soul Bossa Nostra
4. Give Me The Night
5. Tomorrow
6. You Put A Move On My Heart
7. Get The Funk Out Of My Face
8. Secret Garden
9. Betcha Wouldn’t Hurt Me
10. Everything Must Change
11. Many Rains Ago
12. P.Y.T.
13. It’s My Party
14. Hikky-Burr
15. Sanford And Son

クインシー・ジョーンズ:Quincy Jones(produce,compose) (allmusic.comへリンクします)
エイコン:Akon(vo)
ジェイミー・フォックス:Jamie Foxx(vo)
ジョン・レジェンド:John Legend(vo)
スヌープ・ドッグ:Snoop Dogg(vo)
メアリー・J. ブライジ:Mary J. Blige(vo)
エイミー・ワインハウス:Amy Winehouse(vo)

2010年作品

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