「日本百名山」のひとつ、御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の山頂登山が7月1日、解禁された。死者・行方不明者63人を出した噴火災害以来、全国的な山開きにあわせた夏山解禁は5年ぶり。待ちわびた人々の胸の内をたずねた。
噴火当時、噴石が飛んできて、山荘に避難してくる登山者がいたという「仁ノ池山荘」。解禁の前日、多くの登山客が宿泊した。
「山頂で手を合わせる方や涙を流される方がいらした、と聞いています。お客さんの中には登山を楽しむのと同時に、慰霊の気持ちもあったのではないでしょうか」(仁ノ池山荘の管理人)
再開を前に、屋根に防弾チョッキに使われる素材を二重に敷き、噴石の衝撃に耐えうる構造に建て替えたという。
しかし、なお警戒は必要で、長野県の木曽町役場は登山客に安全対策としてヘルメットの着用をすすめている。
「御嶽山は活火山なので、いつまた噴火するかわからない状態です」
同町役場の担当者はこう話す。
「今回の規制緩和は、登山道に限られ、火口付近までは行かれません。町では、剣ケ峰の頂上付近に3基のシェルターを設置し、合計で約90人が避難できるよう備えています」
5合目から7合目までを結ぶ「御岳ロープウェイ」。今孝志社長は、いつ噴火災害によって営業できなくなるかもわからないことが不安だ、と明かした。
「山開きしてから悪天候が続いている状態で、利用者はまだ少ないです。梅雨が明けてからどう推移していくかですね」
と語り、ぐずつきがちな空模様を見つめている。
このロープウェイは噴火前の2013年度まで10万人を超す利用者がいたが、昨年は3万人台にとどまった。再開までの道のりは、やはり平坦ではなかったようだ。
「噴火で火山灰による被害を受けました。ロープウェイのゴンドラのワイヤに生コンのような泥がへばりつき、洗浄して復旧させるまでに苦労しました」
再開に際し、噴火で犠牲になった遺族に寄り添いたい、という思いを抱く。そのうえで、また多くの人に御嶽山を訪れてもらえれば、と願っている。
登山道は10月16日まで開かれる予定だ。
(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日オンライン限定記事