先週初め、BBC日本版ネットニュースに、「米『スーパーリッチ』18人、富裕税導入を大統領選候補者に要望」という見出しの記事が掲載された。
カリスマ投資家ジョージ・ソロス氏など計18人が、裕福な者にさらなる課税をすべきだと主張し、民主党の大統領選候補の一人、エリザベス・ウォーレン上院議員が唱える、総資産5千万ドル(約55億円)超の個人への増税案を称賛したという。
一方の日本では、今月の参議院議員選挙で、年金問題と並んで「格差」問題も争点の一つになりそうだ。格差が生じる大きな要因の一つに収入がある。人々は、同じように働いても、同じ収入を得られるわけではない。その違いが大きくなければよいが、ある程度を超えると、社会的に許容できない問題が生じる。
そこで、多くの国では、所得に対する課税において、まず、一定の金額までは税をかけないようにしたり、各種の控除を認める。さらに、「累進課税」と言って、控除後の課税所得に対する税率を一律にするのではなく、所得が増えるにつれて、より高い税率を課す制度を取っている。
日本でも、38万円の基礎控除から始まり、医療費、社会保険料、配偶者、扶養などの様々な所得控除が認められ、サラリーマンなら給与所得控除もある。
これらの控除を所得から差し引いた金額が課税所得となるが、それに対する税率は、金額が大きくなればなるほど段階的に上がる。例えば、課税所得が195万円以下なら、税率は5%だが、それを超える分については10%、さらに330万円を超える分は20%と徐々に上がり、4千万円を超える部分は45%の上限税率となる。ちなみに、住民税では、この累進制度は取られておらず、原則一律10%である。これらの控除や累進税率の制度は、収入の格差を縮小しようとする制度だ。
しかし、せっかく、そういう制度を取っているのに、日本では、その効果をぶち壊しにする制度がある。
それが、金融所得の分離課税制度だ。前述のとおり、課税所得4千万円を超える分の所得税率は45%で、住民税10%と合わせて55%の税金がかかる。それとは別に配当や株の売買などでもうけがある場合、普通に考えれば、課税所得が増えて、その分に55%の税金がかかるはずだ。しかし、実際には、この所得は別建てにして、所得税15・315%と住民税5%合わせて20・315%の税率を選択できる。税率は半分以下で済むのだ。