服部幸應さん(服部学園提供)
服部幸應さん(服部学園提供)
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 独りポツンと食事をする。好きなものを、好きなときに。栄養バランスもそっちのけ、濃いめに味付けされた品ばかり、といった食生活を続けたら……。「食育」にまつわる著作で知られる、服部栄養専門学校長の服部幸應さんは、現代にひろがった6つの「こ食」のゆがみを指摘する。

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「『食』は、『人を良くする』と書きます」

 そんな持論にもとづき、服部さんは約30年前から「食育」の大切さを力説している。

 まず「孤食」の問題を挙げる。家族がいない食卓でポツンと食べ、マナーを気にすることもなく、栄養も偏り、好き嫌いが増える。

「寂しくとる食事は味気ないでしょう。難しいかもしれませんが、独居老人もなるべく外に出て、会話の中に入って食事をするほうが良いでしょう」

 次いで「個食」とは、家族それぞれが好きなものを食べること、だ。「バラバラ食」ともいう。

「お父さんがしょうが焼き、お母さんはパスタ、子どもはハンバーグというように、おのおのが好きなものを食べ続けていると、身勝手な発想の持ち主になりかねません」

 いつも好きなものしか食べない「固食」は多くの場合、ビタミンやミネラル、食物繊維不足といった偏りが生じ、生活習慣病につながりやすい。脂肪肝や糖尿病の原因の一つにもなる。

「例えばお昼を毎日菓子パンで済ませる、といった食事を続けていると、イライラしやすくなるでしょう」

「小食(少食)」は、いつも食欲がなく、食べる量が少ないこと。必要な栄養素が不足するので、子どもであれば発育不全で無気力になる場合も。普段食が細い子が他の子と一緒だとモリモリ食べられる、というありがちな話もあるように、孤食との関係も深い。

「“ぼっち食”はつまらなくて食欲も低下するから」

 と服部さんは指摘する。小食は孤食との関わりも深いのだ。

「野菜なら火を通せばたくさん食べられます。『ラタトゥイユ』のように煮込めばいっぱい食べられ、食物繊維もしっかりとれます」

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