私たちは「モダン・ジャズ」という言葉を使うが、それをそのままグループ名にしてしまったのが、モダン・ジャズ4重奏団、M.J.Q.だ。これは考えてみれば凄いことで、あたかも一つの音楽ジャンルを自分たちが代表しているようにも思える。そうした名称がそれほど違和感無く受け入れられたのは、途中解散した時期もあるが、1952年の設立からほぼ半世紀にわたってグループを維持した実績と、その音楽レベルの高さゆえだろう。
ジャズマンが後のロックバンド、たとえばビートルズのようにグループ名を名乗ったのは彼らが先駆けで、それまでは「チャーリー・パーカー・クインテット」など、リーダー名を付けるのがふつうだった。しかも、その中身は必ずしもレギュラー・メンバーとは限らなかったのである。
そうした風潮のなかでM.J.Q.がこうしたレギュラー・グループを結成したのには、明確な理由がある。それは、ちょうどその時期興りつつあった新しいジャズ・スタイル、“ハードバップ”の考え方を実践するためだった。40年代半ばに興ったビバップのようにアドリブ第一主義の音楽から、テーマとソロの有機的結合や、全体の音楽的調和にも意を払ったハードバップを演奏するには、メンバー全員の音楽的方向性がそろっていないとうまくいかない。
つまり、50年代前半は他にもマイルス・ディヴィス・クインテットとかクリフォード・ブラウンとマックス・ローチの双頭コンボなど、息の合ったレギュラー・メンバーによるハードバップ・コンボが次々と登場しはじめた時代だったのである。
モダン・ジャズ・カルテットは音楽監督をピアノのジョン・ルイスが務め、彼と、もう一人のソロイスト、ミルト・ジャクソンとの極めて濃密で有機的なコラボレーションが聴き所となっている。彼らの音楽は、クラシック音楽を思わせるようなジョン・ルイスのアレンジと、ミルト・ジャクソンの生み出すソウルフルなヴァイヴ・ソロが絶妙に溶け合い、テーマとアドリブの融合というハードバップの理想を実現している。
このアルバムは彼らがヨーロッパをツアーしたときの記録で、《ジャンゴ》《アイ・リメンバー・クリフォード》など、極め付きの演奏が収録されたモダン・ジャズ・カルテットの代表的名盤と言って良いだろう。
【収録曲一覧】
ディスク 1
1. ジャンゴ
2. ブルーソロジー
3. アイ・シュッド・ケア
4. ラ・ロンド
5. クリフォードの想い出
6. フェスティヴァル・スケッチ
8. ヴァンドーム
9. 明日に賭ける
ディスク 2
1. ピラミッド
2. スイングしなけりゃ意味ないね
3. スケーティング・イン・セントラル・パーク
4. ザ・シリンダー
5. ラウンド・ミッドナイト
6. バグズ・グルー
7. 四月の想い出
モダン・ジャズ・カルテット : The Modern Jazz Quartet(M.J.Q.) (allmusic.comへリンクします)
ミルト・ジャクソン(ビブラフォン)、ジョン・アーロン・ルイス(ピアノ) パーシー・ヒース(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)
1951年-1981年