内憂外患の安倍首相。次の焦点となるのは、19日に開催される党首討論だ。安倍首相は立憲民主党の枝野幸男氏らと論戦を交わすことになる。党首討論では、かつて民主党(当時)の野田佳彦前首相が解散を表明したことがあるだけに、与野党に警戒感が広がる。
別の自民党幹部は言う。
「解散はないとされているが、あまりに参院選に年金が影響してくると踏めば、安倍首相は思い切って解散を打つ可能性はある。野党は、解散なら自分の選挙で必死。参院選まで手が回らない。党も何があっても対応できるように準備はしてある」
自民党議員によると、8月6日に広島で平和記念式典があり、衆・参院議長が例年、出席する習わしなので、逆算すると7月21日投開票がギリギリ。解散となれば、安倍首相は6月21日までに決めないと物理的に難しくなるという。
同党の西田昌司・参院国対委員長代行はこう語る。
「デフレ脱却、インフレ率2%も未達。党内では消費増税反対の声が根強くあり、私も何度か安倍首相に延期を直言している。増税延期するなら解散して国民に問うたほうがいい」
また、同党のベテラン議員もこう話す。
「党首討論後、先手を打って麻生さんに詰め腹を切らせ、解散に打って出る、という見方もある」
一方の野党側は攻勢を強めている。第1次安倍政権で「消えた年金」問題を追及した長妻昭衆院議員(立憲)がこう批判する。
「麻生さんは受け取りを拒否することで、報告書そのものをなかったことにしようとしています。けれども老後2千万円の赤字になるという試算は、総務省の家計調査に基づくものだから、政府自身が出した数字です」
隠蔽されようとしているのは報告書ばかりではない。厚労省は、5年に1度の公的年金の健全性をチェックする「財政検証」について、「いまも作業中」だとして、いつ公表するのかを明らかにしていない。前回の14年は6月3日に公表されたため、今年も6月中に公表されるとみられていた。野党側は公表を参院選後に先延ばししようとしていると、反発している。