参院選前に早期の幕引きを図りたい安倍首相
参院選前に早期の幕引きを図りたい安倍首相
「受け取らない発言」の説明に追われる麻生金融担当相
「受け取らない発言」の説明に追われる麻生金融担当相
立憲民主党の枝野幸男代表。野党は「年金問題」を選挙の争点にする構え
立憲民主党の枝野幸男代表。野党は「年金問題」を選挙の争点にする構え

「年金問題」で自民党が逆風にさらされている。金融庁の報告書をめぐる一連の騒動が、公示を間近に控えた参院選を直撃するのはまちがいない。ただ自民党内では、この状況だからこそ安倍晋三首相が解散に打って出る可能性がある、と見る向きもある。19日の党首討論の行方が注目される。

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「このような事態を招いたことを、深くおわび申し上げます」

 6月14日の衆院財務金融委員会。金融庁の三井秀範企画市場局長はそう述べ、謝罪した。

 かつて、森友問題に絡み、国会でうその答弁を重ねた財務省理財局長(当時)の佐川宣寿氏を連想させる。

「これまでの政府のスタンスと異なっており、正式な報告書としては受け取らない」と言い放った麻生太郎金融担当相に、忖度しているかのようだ。

 金融審議会は、内閣総理大臣らの依頼を受けた専門家が金融に関する重要な問題を議論する会議だ。今回の報告書は、金融庁が事務局を務め、昨年から12回の会合を重ねてまとめられた。麻生氏は諮問しておいて報告書を受け取らないというのは前代未聞の暴挙だ。

 報告書を作った金融審議会の委員の一人は憤り、こう批判する。

「自分から意見を求めておきながら、受け取らないというのは間違っている。老後、暮らしていくためには、公的年金だけでは足りなくて、自助努力で預貯金や個人年金など金融資産を準備しておくことは多くの人が共有する認識になっている。それにもかかわらず、政府は選挙を意識して、拒否した。忖度したものしか受け入れないのか」

 金融庁官僚がこう話す。

「審議会委員の任命は財務相の名前でやっているので、麻生氏への非難はかなり出ています。2千万円不足というのは、自営業者らが入る国民年金と、サラリーマンらが加入する厚生年金を平均した収入額をもとに試算したもの。国民年金のみの自営業者の場合、2千万円の倍ぐらいの蓄えが必要になります。今は非正規雇用の人が多いので、年金が争点化すると自民党に逆風が吹く」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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