ラグビーの日本代表の応援ソングとなった「兵、走る」は、ライヴでの観客のレスポンスが思い浮かぶ。

 TVドラマ『SUITS/スーツ』の主題歌になった「WOLF」では、遊び心を思わせるCHICのナイル・ロジャース風のギター・カッティングが聞かれ、ホーン・セクションも起用したファンク的なアプローチによるが、メロディーは歌謡テイストが濃い。松本の鮮烈なギターもスリリングだ。

 もう1曲「マジェスティック」はアコースティック・ギターをフィーチャーしたスロー・ロックで、叙情味の漂うもの。松本のクリアなトーンによるソロも印象的。一方、恋人への賛歌を手掛けた稲葉はたっぷり情感を込めたエネルギッシュなシャウトを披露している。

 B’zの音楽的な基盤であるハード・ロックへの再探求とその新たな解釈を具現化したのが「Da La Da Da」と「Rain & Dream」の2曲。前者はレッド・ツェッペリンのドラムスとギター・リフを踏襲しながら、松本ならではの個性を反映したハード・ロックで、ブギ・スタイルなども織り込んだもの。松本のギターに賭ける意気込みがうかがえる。それに応えて稲葉は前向きな人生の歩みを描き、熱唱を聞かせる。

 後者ではフリーのブルース・ロック的なエッセンスを加味。間奏での松本のクリーンなトーンによるソロ、コーダでのゲスト参加のエアロスミスのジョー・ペリーとのギター・バトルが聞き所だ。高校時代に教師から言われた言葉を挿入し、“夢”を“かなえてみせましょう”と稲葉が歌う。他にもロック・バンドとしての神髄、その底力を見せているあたりも聞き逃せない。

 アルバムの最後は勢いまかせに突っ走ってきたこれまでを振り返り、自らを鼓舞するようにこれからの歩みへの意思を歌った「トワニワカク」。

 本作を聞きながら20周年記念作で幅広い音楽性に取り組み、意欲作であると同時に異色作とみなされた『ACTION』を思い出した。本作はそれとは対照的に30周年という節目を経て、今のありのままを表現した解放感に満ちている。爽快感を覚えるのはそんなことに由来するものだろう。

 それでいて昨今、オールド・ファッションとして劣勢を語られることの多いロックへの執着と執念、歌謡性や娯楽性を加味したB’zの姿勢への自信や誇りがうかがえるあたり、エールを送りたくなる会心作だ。(音楽評論家・小倉エージ)

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