松本孝弘と稲葉浩志によるB’zの21作目のオリジナル・アルバム『NEW LOVE』は豪快、痛快、爽快な新作だ。
すでにオリコン週間アルバムチャートでは、初週に1位を獲得。アルバムの総売上枚数が4600万枚を超え、「アルバム1位獲得作品数」と「アルバム総売上枚数」を更新したという。
昨年、デビュー30周年。本作で、稲葉浩志はパワフルでワイルドなシャウターとしての本領を発揮。独自の個性的なトーンによる松本の多彩なギター・ワークも健在だ。幅広い音楽性、親しみを覚える要因のひとつである歌謡性を取り込んでいる。
加えて、音楽的な基盤である70年代や80年代のロックを再追求し、オマージュを織り込みながら新たな解釈を見せる一方、ファンク・ミュージック的なアプローチやフォーキーな叙情性、ポップなAOR的テイストを取り入れ、新味を見せている。
日常のゆううつや焦燥など生活感を反映しながら内省的な心情を表現してきた稲葉の歌詞も、メッセージ・ソング的な色彩を濃くしている。
幕開けを飾る「マイニューラブ」。愛しすぎた人との別れから新しい恋を見つけようと歌う稲葉のシャウト、音色を違えたユニゾンによる松本のギター・リフはB’zならでは。このほど一新されたツアーでのサポート・メンバーのブライアン・ティッシー(ドラムス)とミヒニ・デイ(ベース)の起用がこれまでにない新味をもたらしている。
「恋鴉」はバンド・オブ・ジプシーズ風。ワウ・ギターとヴォーカルのユニゾン、間奏でのジミ・ヘンドリックス風のギター・ソロも一興だ。失恋という“冷たい魔法”にとらわれたまま、恋人への未練を描いた稲葉の歌詞、切なげな表現が光る本作でのハイライト・トラックのひとつだ。
疾走感のあるロック・ナンバーの「デウス」では、カントリーのホンキー・トンク的な演奏が挿入され、松本がギャロッピング・スタイル風を披露してギター・スタイルの多彩さを印象づけている。