現場は、ある地方自治体の役所であった。クライアント企業がその地方でやっている社会貢献事業についてインタビューをするのが、大センセイの役目だ。

 役所の担当者が応接室に通してくれる。やがて、取材に対応してくれる偉い人が現れると、ダイリテン君が言った。

「あとは、ライターとカメラマンがやりますんで」

 君はいったい何のためにそこに居るのかと尋ねたかったが、仕方ない。大センセイ、カメラマン氏と取材時間の割り振りを決めると、インタビューに突入した。

 ダイリテン君が事前にくれた情報もインタビューの時間もわずかしかなかったが、原稿を書くのに十分な材料をなんとかして集めなくてはならない。取材とはまさに“材料取り”なんである。

 一方、カメラマン氏は仕事のできる人らしく、大センセイがインタビューを始めると撮影場所の選定のために静かに部屋を出ていき、インタビューを終えると、わずかな残り時間でピシャリと撮影を終えた。

 時間的に厳しい現場をふたりでなんとか乗り切ったという実感があったが、ダイリテン君は解散するまで、ついにわれわれを名前で呼ぶことはなかった。

「ずいぶん、軽く見られたもんだな……」

 と思ったけれど、でも、軽く見られるのはそう悪いことじゃない。下から見た方が世の中はよく見える。

週刊朝日  2019年6月21日号

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