

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「混雑」。
* * *
GWは富良野へ。もちろん仕事だ。羽田は大変な混雑で保安検査場が長蛇の列。初めて飛行機に乗る人も多いとみえて、検査ゲートで『カンカン』鳴らして何往復もするのを眺めるのも、いとおかし。ちなみに私は23で初飛行機。バッグに刃渡り15センチのカッターを2本入れて通過しようとして没収された。これで通れると思っていたのも、いとおかし(ちなみに飛行機は全て土禁だとも思ってた)。
富良野の仕事は春風亭昇太師匠プロデュース『ふらの落語祭り』。今年で2年目で富良野演劇工場と喫茶・ギャラリー あかならで行われた。あかならは元はドラマ『北の国から』に出てきた“北時計”という丸太造りの喫茶店。店内に高座のあるアットホームな落語会で、楽屋は8畳くらいの一室に芸人4人がすし詰め。
昇太師匠は「去年みたいなことはもうないからね。今年はバスターがあるよ」と言った。はて? 去年? バスター? なんのこと? 「カメムシだよ」と師匠。思い出した。この時期の富良野、丸太造りの建物には屋内に無数のカメムシが這っていたのだ。去年はカメムシちゃんを見つけるたびにティッシュで優しくくるんで窓から外へ放していた。なにしろあの臭い。丁重に扱わないと大惨事。「『バスター』ってなんですか?」「見ればわかる!」と自信満々の笑点司会者。『バスター』は空の2Lペットボトルの注ぎ口から、下5センチを胴切りにし、それを逆さにして注ぎ口部にビニール袋を輪ゴムでセットしただけのもの。見た目はビニール袋付きの漏斗(じょうご)。お分かり頂けますかね?