作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は「フラワーデモ開催の意義」について。
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3月12日、福岡地裁久留米支部で、テキーラを一気飲みさせられ意識を失っていた20代女性に性交したとして、40代男性が準強姦罪で起訴された事件に無罪判決が出た。その1週間後には、静岡地裁浜松支部で、コンビニの駐車場で20代女性に声をかけた40代男性が、暴力をふるい強制性交致傷罪に問われた事件が無罪になった。さらにその1週間後に名古屋地裁岡崎支部で、長年、娘に性暴力をふるっていた父親が準強制性交の罪に問われた裁判で無罪判決が出た。
ほぼ1週間ごとに流される無罪判決の内容は衝撃だった。3件とも裁判官が、女性に同意がなかったことを認めている。それにもかかわらず男性に「故意」がない、女性がわかりやすく抵抗していないといった理由で無罪になった。
そもそもテキーラを何杯も一気飲みさせるとか、そもそも初対面の女性を殴るとか、その時点で「同意」を取るつもりなどないですよね?とフツーに思うが、セックスに少々の強引さは必要とでも裁判官は思っているのだろうか。
胸がざわつき、いてもたってもいられない思いで、福岡地裁久留米支部判決のひと月後の4月11日にフラワーデモを友人たちと呼びかけたことは、先月もここで記した。何をすると決めていたわけではないが、裁判について語るなかで、次々に私も語りたい、という声があがっていった。それは予期せぬ#MeTooの体験だった。自分の思いや体験を、自分の言葉で話し始めたのだ。
一つの声はまた別の声を呼びつながっていくことを、実感している。その後に大阪や福岡でもフラワーデモの開催が決まり、5月11日には全国3都市でフラワーデモ同時開催になったのだ。さらに来月も名古屋や神戸でフラワーデモが計画されている。誰かが中心にいるデモではない。誰かが主導する団体ではない。もう黙りたくない。そんな女性たちの、いてもたってもいられない思いが、花を持って街に出るのだと思う。