バラエティー番組「プレバト!!」で、辛口俳句指導者としておなじみの夏井いつきさん。芸能人がつくった俳句をすっぱりと一刀両断する“毒舌俳人”である一方、全国を巡って俳句の楽しさを広げ、俳句ブームをつくり出しています。作家の林真理子さんが俳句の醍醐味に迫ります。
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林:先生は松山のご出身ですよね。松山といえば俳句王国で。
夏井:ええ、俳句の都、俳都松山。
林:「子規堂」(正岡子規にちなんだ松山市の観光施設)に行くと俳句ポストがあって、「入れてください」ってありますよね。
夏井:町中にあります。路面電車の中にもあるし。
林:松山の人ってふつうに句会をなさるんですか。
夏井:ほかのところとそんなに変わらないと思うんですよ。ただ、全国津々浦々の小学校、中学校、高校とかに俳句を教えに行く仕事も続けてるんですが、学校の宿題で俳句が出るのは、松山しかないみたいです。
林:夏井先生は国語の先生をなさってたんですよね。そのときも俳句の宿題を出していらしたんですか。
夏井:私は生徒にほとんど俳句を教えませんでした。というのは、中学校の教員は松山で2年しかしてないんです。私が生まれたところは高知県境の小さな町で、生まれたときはまだ村でしたが、そこの学校に6年間勤めていたんです。松山市とそれ以外のところでは、俳句に対する姿勢がぜんぜん違うんですよ。
林:「プレバト!!」の人気もあって、今すごい俳句ブームですけど、それでも先生みたいに俳句だけで生活できる方って、何人もいらっしゃらないんでしょう?
夏井:今はそんなにいらっしゃらないですね。ピラミッド型の俳句結社のいちばん上にいらっしゃって、それだけで生活できてる人は10人ぐらいじゃないかな。本業を持たないで、それだけでやってる人は。
林:まだ作家のほうが食べていけるかもしれないですね。印税と原稿料で食べているのは、50~60人と言われていますから。「朝日俳壇」とか「読売俳壇」の選者クラスはどうですか。