林:1位はどんな句でした?

夏井:1位になったのは小学1年生の女の子で、「きょうはもう二回おこられ花の雨」という句だったんです。誰も子どもの句だと思っていなくて、会場に集まった人からも「この句、好きです。これは私と夫の会話です。夫は何もやってくれなくて、今朝も私は夫に2回も3回も文句言って、夫は今こんな気持ちでいるに違いありません」なんて感想も聞かれたり。

林:やさしい奥さんですね。

夏井:ええ、別の人は「これは娘から怒られる年配のお母さんの悲哀を詠んだ句ではないか」と言ったり、いろいろ議論するんです。作者が出てきて「実はこうでした」と言うのが正解ではなくて、みんなが「こうかもしれない」「ああかもしれない」と読みを深めてあげると作品が豊かになる。これが俳句なんです。

林:なるほど。いいですねえ。

夏井:みんな自分の体験を重ねますから、もらい泣きをしたり、おなかかかえて笑ったりするんですね。上手につくるといったことをはるかに超えて、みんなが思いを共有して共感を得て、認められる。そして議論が終わって多数決をして、それぞれの句について私がコメントをつけて、「さあ、作者はどなた?」って言うと、作者が立ち上がって「初めて俳句をつくりましたが、こんな思いでつくりました」とか言うわけです。

林:ほぉ~、すごく楽しそうですね。

夏井:俳句はつくることも楽しいけど、読み解くことが楽しいんですよということを伝えようと思って、「句会ライブ」を二十数年前からやり続けています。

林:俳句の種まきですね。素晴らしいです。

夏井:それの後押しを、「プレバト!!」が思いがけずいい形でやってくれたという感じですかね。

林:先生は、親しい人と句会もなさってるんですよね。

夏井:ええ、あちこちで。俳句集団「いつき組」というんですけど、20~30人集まって句会をやってます。私は「組長」と呼ばれてます(笑)。

林:句会って自分の句を取ってくれない(選んでくれない)と、ほんとに悔しいみたいですね。

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