通電療法は全身麻酔が必要になるため、麻酔科医がいない、もしくは入院設備のない施設では、実施できない。
この難点をカバーする治療として期待されているのが「磁気刺激療法」だ。磁気によって脳の前頭葉に刺激を与える治療法で、世界的には通電療法と並んで実施されている。痛みがほとんどなく、けいれんも起きない。麻酔薬や筋弛緩薬が不要で、外来でも治療を受けられる。日本では現在保険適用外だが、今年6月には適用となる見込みだ。
薬物療法が効かない場合、診断の見直しが必要なこともある。初期の認知症や女性に多い甲状腺機能低下症はうつ病の症状と間違われやすい。また、うつ状態と躁状態を繰り返す「双極性障害」は、うつ状態から始まることが多く、うつ病との鑑別が難しい。
「双極性障害は若い人に多い病気とされてきましたが、最近は高齢で発症する双極性障害も少なくないことがわかってきています。実際に難治性のうつ病と診断された人が、実は双極性障害だったということは、よくあります」(同)
双極性障害は、うつ病と同じ気分障害の一つだが、使用する治療薬が異なる。
薬物療法を続けても効果を感じられず、薬の種類や量が増えていく場合は、セカンドオピニオンを聞くのも一つの方法だ。(ライター・中寺暁子)
※週刊朝日 2019年5月24日号