撮影/写真部・片山菜緒子
撮影/写真部・片山菜緒子
腹膜透析を始めた後に血液透析に移行したり、その逆も可能。腹膜透析に週に1回の血液透析を併用する方法もある (週刊朝日2019年5月17日号より)
腹膜透析を始めた後に血液透析に移行したり、その逆も可能。腹膜透析に週に1回の血液透析を併用する方法もある (週刊朝日2019年5月17日号より)
ホームPDシステム かぐや/機能のポイント (週刊朝日2019年5月17日号より)
ホームPDシステム かぐや/機能のポイント (週刊朝日2019年5月17日号より)
日本大学板橋病院 腎臓・高血圧・内分泌内科教授 阿部雅紀医師
日本大学板橋病院 腎臓・高血圧・内分泌内科教授 阿部雅紀医師

 公立福生病院(東京都福生市)で昨年、人工透析治療をやめて女性患者が亡くなった件がメディアで報じられ、人工透析治療に対する注目が集まっている。人工透析には、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があり、腹膜透析は自宅でできることから、自由度が高く患者の負担が少ない治療とされている。その腹膜透析には、遠隔診療が可能な機器も登場している。

【遠隔機能が付いた装置「ホームPDシステム かぐや」とは?】

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 現在、わが国の慢性腎臓病(CKD)の患者数は約1330万人と推計され、国民の10人に1人が慢性腎臓病を患っていることになる。低下した腎臓の働きを補う治療「腎代替療法」には、大きくわけて「腎移植」と「人工透析」がある。

 腎移植は、成功すれば最も普通に近い生活ができる治療法で、日本ではドナーが不足しているという問題があるが、血縁者や夫婦間で生体腎移植をおこなうという方法もある。

 人工透析には、血液透析と腹膜透析の2種類がある。

 血液透析は長年の歴史があり、実施施設が全国にある。週3回、1回4時間の通院が必要だが、日中だけでなく夜間や深夜の透析を実施している施設もあり、仕事をしながら治療できる。

 腹膜透析は、自分でセットをおこなう必要があるが、さらに自由度は高い。大がかりな設備はいらず、透析バッグと装置を滞在先に持参したり、送ったりすることができれば、世界中、どこにでも行くことができる。山間部などで血液透析のクリニックが近くにない地域でも、腹膜透析を導入する患者が増えている。

 三つの治療は相反するものではなく、一つの治療から別の治療への移行、併用ができるものもある。

 これら三つの治療法から、患者は自分のライフスタイルに合わせた方法を選ぶことができる。ただ、日本では、実施されている透析の多くが血液透析で、腹膜透析が少ない現状がある。透析を受けている患者33万4505人(2017年末時点)のうち、腹膜透析を受けている人は9090人、わずか2.7%だ。

 このような課題をクリアするために、国も適切な治療選択の推進を支援している。18年度の診療報酬改定では、「腎代替療法導入期加算1、2」という項目が新設され、病院が患者に十分な説明をおこなうことを促している。

 また、腹膜透析の機器の技術も進化しており、遠隔診療が可能な機器も登場している。

 ここからは最新機器を導入する病院と患者の事例を紹介しよう。

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