同じ葉山町内にある、音楽家の尾高惇忠さんと綾子さん夫妻の自宅にも両陛下が訪れる。
両陛下が自宅を訪れた際、皇后さまが弾いたピアノの音色を昨日のことのように思い出すという。
「とてもきれいな音でした。皇后さまならではのピアノをお弾きになる。誠実な音を奏でられていました」
5年ほど前に皇后さまが英訳した詩「降りつむ」に、惇忠さんが曲をつけた。
「完成した曲を御用邸にお持ちし、両陛下にお聴きいただいたのです。とても気に入ってくださいました。私たちの自宅にいらしたときも、皇后さまはカセットテープに入れられた曲をお聴きになりながら練習なさっていました」
今年1月には、堀口すみれ子さんが作った詩に惇忠さんが曲をつけ、綾子さんが歌った。
「両陛下とご交流いただけたのは、光栄なことでした。これからはお健やかにお過ごしいただきたく存じます」
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葉山御用邸の正門向かいに薬局がある。先代から60年にわたり店を切り盛りしてきた横島和子さんは、両陛下と母・岩田ハナさんとの写真を店頭に飾っている。
「お写真撮らせていただいてもよろしいですか、とおうかがいしました。すると陛下が『お店の中ならどうぞ』とおっしゃいました。両陛下が店にいらっしゃるなんて夢のようでした」
横島さんは、陛下と長女との写真も大切な思い出と振り返る。
「近くの川でハゼ取りをなさっていた陛下と娘の写真です。陛下がやさしく見守ってくださっているように見えます」
ハナさんは2年前に91歳で他界。その後、両陛下が店に立ち寄られた際、ハナさんの遺影をご覧になった。
「両陛下は、店の入り口で母の写真に向かい黙とうしてくださいました。両陛下はずっと私たちを気遣ってくださっていたのだとあらためて思いました」
(本誌・羽富宏文)
※週刊朝日 2019年5月3日-10日号より加筆