結成から1年を経てのアルバム・デビュー、30代から70代までの英米超世代ユニット
The Impossible Gentlemen
結成から1年を経て、ようやくアルバム・デビューとなった。このクァルテットは昨年5月26日にノルウェー、ベルゲンのジャズ祭《Nattjazz》で観ている。その時はまだグループ名がついていなくて、4人の連名だった。また同祭のパンフレットには最も若いグウィリム・シムコックの顔写真だけが掲載されていたので、彼の新プロジェクトなのだと理解していた。
4人が初めて会い、リハーサルを行ったのは昨年5月。英国人ギタリスト、マイク・ウォーカーの“夢”を知ったBasho Recordsのプロデューサーの尽力により、実現したのである。直後にイギリス&ヨーロッパ・ツアーに出ており、ぼくが観たステージはまだグループが始動して間もないタイミングだったのだ。2枚のリーダー作を通じて注目していたライヴ初体験のシムコックは、ライル・メイズ風のソロでパット・メセニー・グループとの影響関係を示唆し、<オール・ザ・シングス・ユー・アー>をベースにした自作曲でファンキーな一面を見せるなど、アルバムだけでは知ることのできない音楽性を披露。米国のヴェテラン著名人であるスティーヴ・スワロウとアダム・ナスバウムを得たシムコックが、さらに飛躍を遂げていくに違いないとのバンドの構図を読み取った。その後の追加情報を踏まえて、本作に耳を傾けてみる。
プログラムはウォーカーが半数の4曲を書き、シムコックの3曲+ナスバウムの1曲と、全曲メンバーのオリジナルで固めて、バンドの個性をアピール。数多くのライヴを重ね、寝食を共にした上でスタジオに入った成果を収める。ギター&ピアノがユニゾンでテーマを奏でるアップテンポの#1、4、7は、このバンドの勢いを象徴するトラック。両者の躍動的なソロやスリリングな掛け合いが聴きものだ。日本での知名度は低いものの、ジョージ・ラッセル、ケニー・ホイーラー、ジョン・テイラー、アンソニー・ブラクストンとの共演歴があるウォーカーは、ライヴでも感じたようにジョン・スコフィールドを消化したスタイリスト。何故スワロウ&ナスバウムとの共演が夢だったかの理由を探れば、ジョン・スコが80年代初頭に率いたトリオ(『バー・トーク』『シノーラ』)の2リズムであることに行き着く。ライヴでも取り上げていた#5はシムコックがピアニカで、哀愁のメロディを奏でる印象的なバラードだ。30代から70代までの英米超世代ユニットの、今後の可能性も感じさせるデビュー作である。
【収録曲一覧】
1. Laugh Lines
2. Clockmaker
3. When You Hold Her
4. You Won’t Be Around To See It
5. Wallenda’s Last Stand
6. Gwil’s Song
7. Play The Game
8. Sure Would Baby
グウィリム・シムコック:Gwilym Simcock(p) (allmusic.comへリンクします)
マイク・ウォーカー:Mike Walker(g)
スティーヴ・スワロウ:Steve Swallow(b)
アダム・ナスバウム:Adam Nussbaum(ds)
2011年作品