写真の制服の襟元に浮かび上がる「呪」の文字。悪質ないたずらではすまされない、前代未聞の事件が起こった舞台は、何と警察だった。
岐阜県警は、人事管理用として保管されていた幹部の顔写真データに「呪」や「死ね」という文字を書き込んだとして、県内の警察署に勤務する50代の男性警部補を、戒告の懲戒処分にしたと発表した。
監察課によれば、本部で人事管理用の写真を扱う部署にいた警部補が2014年10月ごろ、県警本部内で保管していた幹部の顔写真データに、加工ソフトを使って文字を書き込んだという。
写真は19年2月、人事異動用の資料として、広報課から報道各社にメールで送付していた。
写真の呪という文字に気づいた数社から県警に問い合わせがあり、発覚。すぐ監察課に報告された。
「お粗末な行動というしかない」と呆れるのは、事情に詳しい警視庁OBの江藤史朗さんだ。
「今回、警部補は加工した写真をUSBに入れて持ち運んでいて、それを公用のパソコンに落とし込んでいました」
江藤さんによれば、一般的に警察職員のメールの履歴は全て、監察課でチェックするという。
「警察は基本的に外部接続禁止のインターネット環境です。警視庁を例にとれば、USBを差し込むと警告音が鳴り、監察が飛んできます」
今回、簡単に警部補にたどり着いたのではないかと、江藤さんは言う。
「サイバー捜査担当が投入され、メールに添付された写真の出処を解析。その結果、『呪』の写真が入るUSBが挿入された痕跡があるパソコンを特定しました」
写真を扱う関係者はごく少数。監察課が警部補を特定し、ただすとあっさりと認めた。
その後の聞き取り調査で、警部補は「ご迷惑をお掛けした。この幹部に個人的な恨みがあった」と説明したという。
岐阜県警では「このような事案が発生したことは誠に遺憾。県民の信頼回復に努めていく」とコメントした。
男性警部補は、処分発表直後に退職届を提出している。