元経済産業省官僚の古賀茂明氏は、官僚たちの民間企業への天下りについて苦言を呈する。
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企業のガバナンス論が盛んだ。このところ、一流上場企業の信じられないような不祥事が連日報じられ、そのたびに企業のガバナンス強化が必要だという話になる。そして、ガバナンス強化のための特効薬として期待されるのが、社外取締役の活用だ。
確かに、取締役が社内登用者や関連会社の関係者など内輪の人間ばかりだと、どうしても組織がたこ壺化し、客観的な判断ができなくなったり、身内のかばい合いで不正を発見できなくなったりするのは事実だ。社外の目で経営を監視するという考え方は、理にかなっていると言えるだろう。
そこで政府は、いろいろな形で、社外取締役活用を推進しつつある。今年2月には会社法の改正要綱がまとまり、上場会社や非上場の大会社を対象に、社外取締役の設置を義務付ける方針を決めた。既に東証のルールで大半の上場会社は社外取締役を置いているが、さらにこれを増やす動きが強まるだろう。非上場企業ではかなりの「新規採用」の需要が生まれそうだ。
また、日本に非常に多い親子上場で、子会社の利益が親会社の利益の犠牲になるケースが多いことから、子会社の社外取締役の数を大幅に増やすことも、金融庁の有識者会議や官邸と経済産業省が主導する未来投資会議で議論が始まった。これが実現すれば、例えば、NTTグループでは、NTTドコモやNTTデータなどの大企業でも大幅な社外取締役増員が必要となる。
ところで、これを裏で主導しているのは誰かと言えば、もちろん官僚だ。彼らは、実は嬉々として「企業のガバナンス改革」を推進している。
その理由は、人材難だ。一連の社外取締役活用の動きにより、今後5年程度は、「社外取締役」需要が高まるだろう。